今回は個人型確定拠出年金(iDeCo)を国が推奨する理由を考察します。
これまでの記事で解説した通り、税制の面でかなり優遇されているiDeCoですが、なぜ国はそこまでしてiDeCoを促進したいのでしょうか。
よく「日本の公的年金は破綻する」という声を聞きますが、公的年金が破綻することが想定されるから始めた制度なのでしょうか。
私はそうではないと考えます。
日本の公的年金制度は破綻せず、持続していくものと考えています。
確かに少子高齢化は進み、財政面でかなり苦しくなってくるのは間違いないでしょう。
しかし、公的年金には税金が投入されており、生活する上で最低限必要な金額の給付はされるものと考えられます。
今のシルバー世代でも年金だけでは苦しいのですが、今の若者が年金を受け取る世代になった時、どのような状態になっているのでしょうか。
そもそも公的年金制度はどのような仕組みかを知らない方が多く、給与から天引きされている社会保険料は自分の老後のために積み立てているものと勘違いしている方も多い印象です。
日本の公的年金制度は賦課方式といって、その時の現役世代から合法的に搾取した保険料が原資となり、年金受給世代に分配されるという仕組みです。
つまり、昔のように生産年齢人口が多く、老年人口が少ない人口構成であれば老後は年金だけでも豊かに暮らせるのですが、少子高齢化が進み、生産年齢人口は減少するのに対して老年人口は増加の一途を辿る現状では生活する上で最低限度の金額しか受給できなくなってしまうのです。
生活する上で最低限度の水準を保証するために税金が投入され、どうにか維持できる仕組みなのでしょう。
しかし、数十年先の未来はわかりません。
最低限度の水準すら保証されないかもしれません。
現役世代の負担が重過ぎるのであれば、最低水準の給付は難しくなります。
日銀の政策としてインフレ率2%を目標としていますが、インフレにしようとする目的として考えられるのは、実質的な給付額の引き下げではないでしょうか。
額面は変わらなくても、物価が上がれば相対的にお金の価値は下がります。
このように、実質的な引き下げは意図として考えられるでしょう。
参考記事
これまでの解説を踏まえて、iDeCoという制度が始まった理由を考察しましょう。
公的年金だけでの生活は厳しいのは目に見えているため、公的年金をベースにそこに何か上乗せできればよいと考えたのではないでしょうか。
そこで、税制面で優遇することで私的年金の利用を促進したのではないかと考えます。
生活する上で最低レベルのベースは公的年金で、そこから先の豊かに暮らすために自由に使えるお金はiDeCoで、ということではないかと考えます。
これから数十年先も公的年金だけで十分に生活できるだけの給付ができる見込みがあるならば、このような制度は始まっていないのではないでしょうか。
この制度の開始は、暗に公的年金だけでは国民の老後の暮らしを保障できないということを示唆していると考えます。
当然のことながら、政府は公的年金だけでは老後の暮らしを保証できないなどという事実を公にすることはできませんから、公的年金の仕組み、今後の人口構成の変遷の予測や、iDeCoという制度が始まったという事実関係から、自分で考えてこのような結論を出すしかありません。
上記のような展望が予測できるのであれば、制度を活用し、必要な対策を講じればよいのです。
公的年金は、社会全体で支えるという相互扶助の考えを基にしていますが、これから先の未来は「自分の身は自分で守る」という考えを持ち、能動的に動かなければ生きていくのも困難な時代が待ち受けているのかもしれません。
全ての答えが調べればわかるわけではありませんから、事実関係を基に自分で考える力が必要です。
その能力を養う事ができれば、どのような厳しい状況下でも生き抜く事ができるでしょう。