大地震が襲い、大規模停電で大きな混乱が生じた北海道。
電力事情を考えると、このまま火力発電に頼っていては厳しい冬を越せないのではないかと考えられます。
北海道にある火力発電所はほとんどが老朽化しており、大部分が運転開始から30年以上経過しています。
北海道に限らず全国的な問題ですが、東日本大震災以後原発を停止させてからは老朽化した火力発電所を酷使してきました。
その結果、全国の火力発電所でトラブルが相次ぎました。
北海道においても、来年にも廃止を予定している老朽化した火力発電所を稼動させることで、どうにか綱渡りで電力を供給している状況です。
老朽化した火力発電所をこのまま酷使し続ければ、トラブルが起きる可能性が高く、その場合には真冬の高い電力需要に応えることが出来なくなり再びブラックアウトを起こす恐れがあります。
地震発生後の9月7日には石油火力の音別発電所1号機が、11日には2号機がトラブルを起こし停止しました。
釧路市にある音別発電所は1978年の運転開始から40年が経過し、来年3月に廃止の予定となっている火力発電所です。
経済産業省が発表した中期的な需給予想では、寒さの厳しい12月のピーク需要516万kWに対し供給力566万kWを確保できる見通しのようですが、苫東厚真火力発電所が11月中に全面復旧し、さらにトラブルが無い場合の数字であると思われます。
苫東厚真火力発電所の復旧が見込み通りに進む保障はなく、復旧が2ヶ月以上も先になるという見込みであるということは、それだけ酷い損傷であることを示唆しています。
年内に間に合わない可能性もあり、道民にとっては死活問題です。
現在、新たに石狩湾新港発電所が稼動予定ですが、2019年2月の予定であるため、冬には間に合いません。
稼動すれば、出力約170万kWであり、苫東厚真火力発電所の出力をやや上回るため北海道の電力供給は安定するのですが、残念ながら冬には間に合いません。
また、2ヶ所の大規模発電所に依存するという状況のためリスク回避にはならず、根本的な解決には至りません。
このままでは道民が冬を越せるという保障はできない状況です。
しかし、政府は泊村にある泊原子力発電所を再稼動させる考えは全くないようで、ただ「節電」を呼びかけるだけです。
今回の大停電は人災であるとの声が多いのですが、再び大停電となってしまった場合には明らかに人災であると言わざるを得ないでしょう。
現状としては、家庭用蓄電池やソーラーチャージャーを持つなどの対策で停電時に備えるしかありません。
こちらの記事で解説しています。
北海道を襲った大地震・停電から得た教訓 ソーラーチャージャーに注目
冬を越せるかどうかという問題も危惧されるのですが、エネルギー価格の上昇に加えて停電の復旧にかなりのコストがかかっており、さらに現在の電力供給にもかなりのコストがかかっています。
もともと北海道は他の地域に比べて電気料金が高いのですが、今後はこのコストも電気料金に転嫁されてくるでしょう。
因みに、全く発電していない泊原発は2012年からの4年間で3087億円もの維持費がかかっており、この分も電気料金に転嫁されています。
今回の地震で北海道は経済的に大きな打撃を受けていますが、電気料金の値上げがさらなる追い討ちをかけることになりそうです。