税金よりも高い社会保険料 保険料率18.3%から25.9%へ? 待ち受ける最悪のシナリオとは

今回は社会保険料について解説します。

給与明細を見て、思うことはないでしょうか。

厚生年金や健康保険の欄を見てください。

税金に比べて随分と高いとは思いませんか。

昇給しているのに手取りがあまり増えていないと実感されている方も多いかと思いますが、その要因の1つがこの社会保険料です。

厚生年金保険料が平成29年度まで毎年0.354%ずつ上昇し続けていたこともあり、特に高いと感じるのではないでしょうか。

「多く払っていればそれだけ多くもらえるんだからいいじゃん!」という方もいますが、果たしてそうなのでしょうか。

 

社会保険料の中で給与から天引きされるものは健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料です。

雇用保険料は、毎月の給与支給額に保険料率を乗じた額を給与から控除するため毎月変動し、賞与からも控除されます。

保険料率は一般の事業の場合、平成30年度は0.3%です。

 

協会けんぽの場合、健康保険料は都道府県により異なりますが、概ね10%程度です。

東京都は9.90%、北海道は10.25%と、多少の差はありますが、10%前後と理解しておけばよいでしょう。

 

介護保険料については全国一律で、平成30年の保険料率は1.57%です。

40歳以上65歳未満の健康保険の被保険者が負担します。

 

厚生年金保険料は毎年引き上げられてきましたが、現在の18.3%で固定になりました。

何も知らないサラリーマンには気付かれにくいよう、0.354%ずつ引き上げてきたため、初めて知った方は驚かれることでしょう。

2004年から13年間にわたり引き上げ、政府は100年後も所得代替率50%を確保すると国民に約束してきました。

所得代替率とは、現役世代の平均賃金に対する公的年金の給付額の割合であり、政府が公表する所得代替率とは現役世代の手取り収入(可処分所得であり、税、社会保険料を含まない)に対する公的年金の給付額(税、社会保険料込み)である点に注意しましょう。

つまり、分母は税、社会保険料を除いて小さくし、分子は税、社会保険料込みで大きくすることで割合を大きく見せるという数字のカラクリがあります。

結論を言うと、実質的に所得代替率が50%を下回るのは間違いないということです。

政府が公表する数字は過大評価されたものであると認識してよいでしょう。

さらに驚くべきことに2014年の財政検証で厚生労働省は、所得代替率50%を維持するには25.9%の保険料率が必要であるとし、今後さらなる引き上げの可能性が示唆されました。

財政検証は5年に1度行われるため、次は来年2019年です。

考えるだけでも恐ろしいのですが、この現実を受け止め、必要な対策を講じなければ健康で文化的な最低限度の生活を営むことさえ困難になるかもしれません。

 

話を戻しますが、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料については労使折半であるため、給与から天引きされるのは半分で、残りの半分は会社が負担します。

そのため、社会保険料は報酬の概ね15%程度天引きされます。

また、毎月変動するものではなく、標準報酬月額によって決まります。

有効求人倍率は2018年6月のデータで1.62倍となり、人手不足が深刻であるとの報道もありますが、この数字は非正規雇用を含むものです。

正社員に関しては全国で1倍を少し超える程度であり、地方では1倍を大きく割り込み深刻な状態です。

正規雇用が進まない理由の一つとして挙げられるのが、この社会保険料の負担が企業にとっても重いということです。

我々にとっても非常に重いのですが、雇う側も同じだけ負担するのですから、この社会保険料を抑えたいのは労使共通の考えであるのが一般的なのでしょうか。

正規雇用が進まないのは、社会保険料のかからない非正規で働いてもらうことでコストを抑えたいという狙いがあります。

 

ここまで社会保険料について解説してきましたが、将来的な給付額の減少、現役世代のさらなる保険料負担増を考慮すると、社会保険料の負担を抑えて可処分所得を増やし、その分で投資をするという選択が賢明ではないかと考えます。

公的年金は相互扶助の考えもありますが、合法的に搾り取るだけ搾り取られる一方でその分還元されないのであればこのような考えになるのは当然でしょう。

国の上層部の人間の無能さが招いたこの状況の尻拭いを罪の無い国民がするのはおかしいことです。

私達は最低限の義務を果たし、自分の身は自分で守るという姿勢でよいのではないでしょうか。

国家の犬にならなければならない理由はありません。

 

社会保険料を抑えるためには、社会保険料がどのように決まるのかを理解しなければなりません。

こちらの記事で解説していますので、是非ご覧ください。

社会保険料はどのように決定されるのか 3月~5月の残業に注意

 

社会保険料を抑えて投資に回すという選択が賢明であると述べましたが、税制面で優遇され、資産形成を後押しする制度として個人型確定拠出年金(iDeCo)、つみたてNISAがあります。

これらの制度は国が促進しているものですが、その理由についてはこちらの記事で解説しています。

なぜ国はiDeCoやつみたてNISAの積極的な利用を勧めるのか①

なぜ国はiDeCoやつみたてNISAの積極的な利用を勧めるのか②

 

【最新】2019年財政検証の情報はコチラ

2019年財政検証の結果が示す年金の悲惨な未来と政府のその場しのぎ体質

 

2018年人事院勧告 定年延長 住居手当にも言及

8月10日、人事院は国会及び内閣に対し、国家公務員の給与の改定を勧告しました。

勧告内容通りの引き上げとなる見通しで、臨時国会で改正給与法が成立後、月給の差額分については4月分まで遡って支給されることになります。

ただし、国家公務員準拠の給与体系の職場に勤務する方も同様に4月分まで遡って支給されるとは限りませんが。

 

民間給与との差一人当たり655円(0.16%)を埋めるため俸給表の水準を引き上げるとともに、賞与を0.05月分引き上げるという勧告内容です。

特に若年層については民間との差が大きく、1000円程度の引き上げ、初任給については1500円の引き上げとなります。

若手については手厚くする一方、級及び号の高いベテラン層については400円の引き上げにとどまります。

因みに薬剤師の初任給は医療職二表2級15号俸ですが、1200円上がり209,000となる見込みです。

 

さらに、今回の勧告では住居手当の見直しについても言及があり、国家公務員の住居手当の上限は現在27,000円ですが、今後引き下げられる可能性があります。

例えば東京都では住居手当の上限は15,000円、さらには満34歳に達する年度までしか支給されないという年齢制限もあります。

まだ先の話になるのでしょうが、民間では支給されていない企業も多く、減額や支給対象に年齢制限を設ける等の方向になるのではないでしょうか。

 

さらに今回の勧告では、既定路線ではあるのですが、国家公務員の定年を引き上げ、段階的に65歳とするための国家公務員法等の改正に関する意見の申し出がありました。

役職定年を設け、給与については60歳前の7割の水準が適当であるとの意見の申し出です。

公的年金の懐事情は厳しいものであり、支給開始年齢の引き上げのために必要なのでしょう。

現在の若年層は果たして何歳まで働くことになるのか、考えたくもありませんね。

公的年金については実質的に支給額を減額していきますが、下記の記事で解説しています。

 

参考記事

なぜ国はインフレにしたいのか 生活に与える影響は

 

また、個人型確定拠出年金(iDeCo)という税制面で優遇し、年金の減額分を自助にて補うための制度についての解説もぜひご高覧いただきたいと思います。

 

参考記事

若者の資産形成に有効な制度① 個人型確定拠出年金(iDeCo)

なぜ国はiDeCoやつみたてNISAの積極的な利用を勧めるのか②

資産を10倍にする機会の損失 すぐにでもiDeCo、つみたてNISAを始めた方がよい理由

 

 

以上、2018年人事院勧告について解説しましたが、これから就職しようという学生等で公務員という進路を考えていない方でも、国家公務員の給与体系については知っておいた方がよいと考えます。

民間でも公表されていないだけで、普通は国家公務員の俸給表のような、給与を決めるシートがあり、それに基づいて給与を決定するものだからです。

また、公務員の表面上の給与は若いうちは安いように思われますが、実際にはどうなのか、そのカラクリを知ると考えが変わるかもしれません。

国家公務員の給与についてはまたの機会に解説する予定です。

インフレ傾向にあるが、その実態は・・・ 2018年6月

物価は上がっているという印象はあるでしょうか。

確かに災害や猛暑の影響で一部の食料品の価格は上がっています。

さらに、ガソリンや電気代などのエネルギー関連の上昇が目立ちます。

このようなインフレは望ましいインフレと言えるのでしょうか。

 

現在の状況はスタグフレーション(経済が停滞しているにも関わらず、物価が上昇すること)とまでは言いませんが、好ましくないと考えます。

経済が活性化されていない状況で、食料品価格の上昇やエネルギー価格が高騰している現在の状況は企業の業績悪化、賃金上昇の抑制の悪循環を招きかねないのではないでしょうか。

日銀は従来、物価は「プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる」との見方を示してきたものの、その実態は果たしてどのようなものか検証します。

 

まずはCPI(消費者物価指数)について理解しましょう。

以下の3つに大別されます。

 

・CPI:消費者物価指数(総合)

・コアCPI:消費者物価指数(酒類を以外の食品を除く総合)

・コアコアCPI:消費者物価指数(酒類以外の食品及びエネルギーを除く総合)

 

全体の指標以外にも、生鮮食品は天候の影響を受けやすく価格変動が大きいため、生鮮食品を除いた「コアCPI」という指標があります。

さらに、生鮮食品に加えて市況などによる影響を受けやすいエネルギーも除いた「コアコアCPI」という指標があります。

コアコアCPIが物価変動を把握しやすく、実態を反映していると考えられます。

 

総務省が7月20日に公表した2018年6月の消費者物価指数に関するデータによれば、コアCPIは前年比0.8%(5月:同0.7%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント上昇しました。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.56%(5月:0.44%)、食料(生鮮食品を除く)が0.18%(5月:0.25%)、その他が0.05%(5月:0.00%)となります。

コアCPIの上昇をもたらしたのはエネルギー価格の上昇が主な要因です。

 

コアコアCPIについては、6月の東京都区部では前年比0.2%から同0.4%へと上昇が見られたものの、全国では前年比0.2%(5月:同0.2%)と3ヵ月連続で伸びが鈍化しているのが現状です。

つまり、エネルギーの寄与が大きく、実際に物価の上昇はさほど見られません。

 

このように、物価上昇の伸びの実態は低いレベルであり、インフレによる好循環はまだ期待できない状況です。

賃金は上昇していますが、エネルギー価格の上昇の影響により消費に回す費用の捻出が難しくなるのであれば、物価上昇、景気の回復はまだ先になりそうです。

 

原油価格上昇の影響が遅れて反映される電気代、ガス代を中心にエネルギー価格の上昇率が高まることから、コアCPIは今後も上昇する見込みですが、コアコアCPIはどうなるのでしょうか。

やはり物価変動の実態はコアコアCPIで判断すべきでしょう。

コアCPIの伸びに比べてコアコアCPIのそれが大きく下回るならば、国民の暮らしは厳しいものになっているという解釈でよいでしょう。

エネルギー関連価格の上昇が家計に与える影響は大きいと考えられます。

 

しかし、この物価の上昇が見られない今投資を積極的に行えば、インフレ時には資産価値の上昇が期待できるのではないでしょうか。

先を見越して積極的な投資を行うのに適した時期ではないかと思います。

なぜ国はインフレにしたいのか 生活に与える影響は

日銀の政策として、インフレ率2%を目標としていることについてはこれまでの記事で触れてきました。

現金主義は安全か? インフレ率2%でどのように変わるのか」の記事の中で、インフレにしたい理由について少し触れていますが、今回の記事ではその理由についてさらに詳しく考察します。

 

まずは円高トレンドの解消についてです。

日本はバブル崩壊以降、20年以上の長期間デフレの状態が続いていました。

欧米ではインフレ率2%を目標としていたため、外国のインフレ率が長期間デフレの状態の日本のインフレ率を上回る状況が長期間続いていました。

インフレ率が高い通貨は安くなるため、相対的に日本の円は高くなります。

海外のインフレ率に合わせて2%を目標とし、円高傾向から脱するのが目的と考えられます。

円高は輸出企業の業績を悪化させます。

日本は輸出企業の割合が大きいため、日経平均は下がります。

インフレ率を他国と同程度にすることで円高トレンドを解消し、日本の株価上昇、景気回復を目的としていると考えてよいでしょう。

 

次に財政の健全化が考えられます。

物価が上がるということは、同じ物を買うのにそれまでより多くお金を払うことになります。

例えば、今まで100円で買ことができていた物に120円払わなければ買うことができなくなります。

つまり、お金の価値が下がるということです。

インフレにより、金額は変わらなくても実質的に国の借金を減らすことができます。

 

さらに、公的年金の実質的な支給額を下げるという目的も考えられます。

2004年、そのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組み(マクロ経済スライド)を導入しました。

この仕組みの導入により、物価や賃金の上昇率よりも給付額の上昇率は低く抑えられます。

2025年頃までは上昇率は物価や賃金の上昇率よりも年平均0.9%低く抑えられる見込みです。

今後はインフレによる物価の上昇率よりも給付額の上昇率を低くするため、実質的な年金給付額の引き下げと解釈することができます。

 

以上、国がインフレ率2%を目標とする理由について簡単に解説しました。

この目標は2013年から掲げられていたものですが、5年程経過した2018年6月現在はどのように変化しているのかを解説した記事を掲載していますので、ぜひご覧ください。

 

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インフレ傾向にあるが、その実態は・・・ 2018年6月

公的年金制度の仕組み なぜ賦課方式なのか

今回は、以前「なぜ国はiDeCoやつみたてNISAの積極的な利用を勧めるのか②」の記事の中で少し触れた公的年金制度について部分的に解説します。

 

公的年金は2階建て構造をしています。

20歳以上60歳未満の全ての国民が加入する国民年金(基礎年金)と、公務員や会社員が加入する厚生年金の2階建てです。

詳しい仕組みについては、ネットで検索すればいくらでも出てきますからそちらを参考にしてください。

今回は公的年金が「賦課方式」である理由について解説します。

 

以前の記事では公的年金は「賦課方式」であると解説しました。

改めて解説すると、賦課方式とはその時の現役世代から合法的に搾取した保険料が原資となり、年金受給世代に分配されるという仕組みのことです。

自分の老後のために積み立てていると勘違いしている方も多いのですが、まずはこの根本的な仕組みを理解しましょう。

現代の若者世代にとっては、少子高齢化のこの時代に保険料を散々搾り取られたにも関わらず、自分たちが年金を受け取る頃には搾取された分を考えると受け取る額が少なく、損をしてしまうのではないかと思われます。

確かにその通りではあるのですが、単純に積み立て方式だとあるリスクがあり、このリスクは賦課方式によって回避できます。

それは、物価の変動による資産価値低下です。

積み立て方式の場合、物価が上がれば相対的に積み立ててきたお金の価値が下がります。

そのため、物価が上昇し過ぎると、それまで積み立ててきたお金では老後の生活が困難になるかもしれません。

現在の100万円と数十年後の100万円の価値は恐らく違うでしょう。

このような物価の変動のリスクを避けるために賦課方式という仕組みで運用されているのです。

賦課方式であれば現役世代の保険料が原資となるため、物価が上昇した分保険料も増えるため、物価の影響が補正されその時代の生活水準に見合った金額が給付されるということです。

物価の変動による資産価値の変化については、次の記事で解説しています。

 

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現金主義は安全か? インフレ率2%でどのように変わるのか

現金主義は安全か? インフレ率2%でどのように変わるのか

日本人は現金主義であり、資産を現金で保有することが安全だと考える人が多いようです。

果たして本当にそうなのでしょうか。

 

これからこの国の物価は変わらないでしょうか。

それほど変わらずに何十年も経過するのであれば、リスクはないでしょう。

結論を言ってしまえば、インフレに向かっていきます。

日銀の政策として、インフレ率2%を目標としていますが、これが本当に達成されるかどうかはさておき、これを達成するためにあらゆる手を講じています。

つまり、国の方針としてインフレにシフトさせたいということです。

 

インフレにしたい理由としては、円高トレンドの解消による株価上昇(日本は輸出企業が多いため、円高の場合は株価が下がる)、業績改善に伴う税収増、賃金上昇に伴う税収増、前回の記事でも述べたとおり、実質的な年金給付額の引き下げによる財政健全化等が考えられます。

 

インフレに向かう中で、資産を現金で保有することはどれだけリスクがあるのでしょうか。

仮にインフレ率2%で5年間推移した場合、1000万円はどれだけ価値が下がるのか計算してみましょう。

1000万/(1.02)^5≒906万

906万円以下にまで価値が下がってしまいます。

 

現金で資産を保有するということは、インフレ時においてはこれだけリスクがあるということです。

これを投資に回せば、インフレによるリスクは回避できるでしょう。

もちろん別のリスクはありますが、インフレになれば景気は上向いていくので、資産はそれなりに増えていくでしょう。

 

このインフレも「貯蓄から投資へ」を勧める理由です。

 

昔は銀行にただお金を預けていれば、それだけでお金は増えていきました。

しかし、現代はそうではありません。

時代に合わせて、その時の状況に応じて適切な手段を選び、適応していかなければ豊かに生きることはできません。

 

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なぜ国はインフレにしたいのか 生活に与える影響は

インフレ傾向にあるが、その実態は・・・ 2018年6月

なぜ国はiDeCoやつみたてNISAの積極的な利用を勧めるのか②

今回は個人型確定拠出年金(iDeCo)を国が推奨する理由を考察します。

これまでの記事で解説した通り、税制の面でかなり優遇されているiDeCoですが、なぜ国はそこまでしてiDeCoを促進したいのでしょうか。

 

よく「日本の公的年金は破綻する」という声を聞きますが、公的年金が破綻することが想定されるから始めた制度なのでしょうか。

私はそうではないと考えます。

日本の公的年金制度は破綻せず、持続していくものと考えています。

確かに少子高齢化は進み、財政面でかなり苦しくなってくるのは間違いないでしょう。

しかし、公的年金には税金が投入されており、生活する上で最低限必要な金額の給付はされるものと考えられます。

今のシルバー世代でも年金だけでは苦しいのですが、今の若者が年金を受け取る世代になった時、どのような状態になっているのでしょうか。

そもそも公的年金制度はどのような仕組みかを知らない方が多く、給与から天引きされている社会保険料は自分の老後のために積み立てているものと勘違いしている方も多い印象です。

 

日本の公的年金制度は賦課方式といって、その時の現役世代から合法的に搾取した保険料が原資となり、年金受給世代に分配されるという仕組みです。

つまり、昔のように生産年齢人口が多く、老年人口が少ない人口構成であれば老後は年金だけでも豊かに暮らせるのですが、少子高齢化が進み、生産年齢人口は減少するのに対して老年人口は増加の一途を辿る現状では生活する上で最低限度の金額しか受給できなくなってしまうのです。

生活する上で最低限度の水準を保証するために税金が投入され、どうにか維持できる仕組みなのでしょう。

 

しかし、数十年先の未来はわかりません。

最低限度の水準すら保証されないかもしれません。

現役世代の負担が重過ぎるのであれば、最低水準の給付は難しくなります。

日銀の政策としてインフレ率2%を目標としていますが、インフレにしようとする目的として考えられるのは、実質的な給付額の引き下げではないでしょうか。

額面は変わらなくても、物価が上がれば相対的にお金の価値は下がります。

このように、実質的な引き下げは意図として考えられるでしょう。

 

参考記事

なぜ国はインフレにしたいのか 生活に与える影響は

 

これまでの解説を踏まえて、iDeCoという制度が始まった理由を考察しましょう。

公的年金だけでの生活は厳しいのは目に見えているため、公的年金をベースにそこに何か上乗せできればよいと考えたのではないでしょうか。

そこで、税制面で優遇することで私的年金の利用を促進したのではないかと考えます。

生活する上で最低レベルのベースは公的年金で、そこから先の豊かに暮らすために自由に使えるお金はiDeCoで、ということではないかと考えます。

これから数十年先も公的年金だけで十分に生活できるだけの給付ができる見込みがあるならば、このような制度は始まっていないのではないでしょうか。

この制度の開始は、暗に公的年金だけでは国民の老後の暮らしを保障できないということを示唆していると考えます。

当然のことながら、政府は公的年金だけでは老後の暮らしを保証できないなどという事実を公にすることはできませんから、公的年金の仕組み、今後の人口構成の変遷の予測や、iDeCoという制度が始まったという事実関係から、自分で考えてこのような結論を出すしかありません。

上記のような展望が予測できるのであれば、制度を活用し、必要な対策を講じればよいのです。

 

公的年金は、社会全体で支えるという相互扶助の考えを基にしていますが、これから先の未来は「自分の身は自分で守る」という考えを持ち、能動的に動かなければ生きていくのも困難な時代が待ち受けているのかもしれません。

 

全ての答えが調べればわかるわけではありませんから、事実関係を基に自分で考える力が必要です。

その能力を養う事ができれば、どのような厳しい状況下でも生き抜く事ができるでしょう。

なぜ国はiDeCoやつみたてNISAの積極的な利用を勧めるのか①

iDeCo、つみたてNISAは国が積極的に推進している制度です。

なぜここまで税制面で優遇し、国が後押ししているのかを考察します。

今回はつみたてNISAについて、その理由を考えましょう。

 

結論を言ってしまえば、つみたてNISAは経済対策と考えるのが妥当です。

2017年6月の金融庁資料によれば、我が国の家計金融資産約1700兆円のうち、52%にあたる900兆円が現預金であるとのこと。

もちろん、マイナンバー制度が始まったとはいえ国が国民の資産を全て把握しているわけではないですから、実際にはもっと多いと推測されます。

この国の問題点は、家計金融資産に占める株式や投資信託の割合が小さいことです。

日本人の現金主義こそが資産形成の妨げであり、景気が思うように上向かない要因です。

現金で資産を有することは安全であるという認識が一般的なのでしょうが、果たしてそうなのでしょうか。

この問題については、「現金主義は安全か? インフレ率2%でどのように変わるのか」の記事で解説しています。

 

現状の現金主義のままでは日本人は資産を増やすことができません。

この低金利時代に銀行にお金を預けたところで、ただ預けるだけになってしまいます。

ほぼ増えません。

昔は銀行にお金を預けていれば、お金は増えたものです。

バブル期には普通預金で金利2%以上、定期預金で6%以上でした。

しかし今はほぼ0です。

昔の方法が通用しない今の時代で資産を増やしたければ、やはり投資です。

 

現行のNISAでは、積み立てによる利用は総口座数の1割以下であり、積み立て投資はさほど浸透しませんでした。

欧米のように長期の積み立て投資を促進し、国民に成功体験をもたらし、投資がさらに促進されるという好循環をもたらすために政府は本気になったのでしょう。

その結果、つみたてNISAが始まったのではないでしょうか。

税制面で優遇し、金融機関が儲けるためではなく、投資家本位の優良な商品にお墨付きを与え、投資へのハードルを大きく下げることで小額投資を促進し、投資が身近なものになればこの国の景気も良くなってくるのではないでしょうか。

よくお金は血液に例えられます。

お金を使って循環させていかないと、経済は活性化されません。

 

関連する内容として、個人型確定拠出年金(iDeCo)を促進する理由については次の記事で解説しています。

 

参考記事

なぜ国はiDeCoやつみたてNISAの積極的な利用を勧めるのか②

欧米の金持ちはどのように資産を形成しているのか

日本人は現金主義です。

家計金融資産の50%以上が現預金であり、株式や投資信託等の占める割合は小さいのです。

欧米の場合はどうでしょうか。

アメリカと比較してみると、はっきりと日本人との資産運用の考え方の違いがわかります。

2017年金融庁資料によれば、現預金の割合は日本が52%もあるのに対し、アメリカは13.7%しかありません。

株式・投資信託の割合は、日本が18.8%であるのに対し、アメリカでは45.4%です。

こんなにも違いがあります。

アメリカでは投資に関する教育を行い、貯蓄から投資にお金の流れを変えることに成功し、大いに国民が富むという結果をもたらしました。日本でも欧米に数十年遅れてこの方向に舵を切ったのです。

約1700兆円あると言われる家計金融資産のうち、半分以上が現預金であるこの状態から投資の割合が増えていけば、株等が上がり、上がるからまた買うという好循環を生み出します。

 

ここで、アメリカの積み立て投資による成功例を紹介します。

こちらをご覧ください。

 

http://markethack.net/archives/51959378.html

 

ほとんど贅沢をせずに10億も遺して死んでしまったという点はさておき、ここで注目していただきたいのは、決して難しくリスクのあることはせずに、ただ買って放置していただけで10億にまで増やすことが出来たという点です。

彼が行っていたことは、株といっても日本人がイメージする短期の売買により利益を狙うデイトレードのような「投機」とは違い、長期保有による成長が見込める企業に対する「投資」です。

日本人がイメージする株とは、安い時に買い、上がったら売るという投機ですが、欧米では長期保有の積み立て投資は一般的であり、この積み立て投資こそが資産形成のスタンダードです。

資産家一族の場合は、何代もかけて、数百年という時間をかけて時間によって資産を大きくしていったのです。

株で失敗するのは、売買のタイミングを誤ってしまうためです。

積み立て投資で優良な資産を持てば、長い年月をかけて着実に増えてくるものです。

 

欧米のやり方を模倣し、分散投資によるリスク回避、長期的な積み立て投資により成功体験をもたらし、国民の投資に対するイメージを変えることがこの国の経済の発展には必要不可欠です。

資産を10倍にする機会の損失 すぐにでもiDeCo、つみたてNISAを始めた方がよい理由

これまでの記事を読んで、iDeCoやつみたてNISAの必要性について理解したものの、いつから始めたらよいかわからないという方はなるべく早いうちに始めましょう。

それはなぜか。

 

若い人が積み立て型の投資を始めるのが遅くなると、どれほどの資産を増やす機会を失うのかシミュレーションしてみると、その理由がわかります。

 

25歳の若者がiDeCoを始めて60歳まで積み立てるというケースを考えて見ましょう。

この若者がiDeCoを始めるのが1年遅れたとします。

年間の積立額が276,000円(月23,000円)とすると、ここで積み立てた276,000円が、35年間かけて増える分が失われるということです。

仮に年利7%で運用できたとすると、

276,000×(1.07)^35≒2,945,000

つまり、35年間もかけると10倍以上に増える計算になります。

実際にはここまで上手くいかないものなのでしょうが、この何もしなくても10倍に増やすチャンスを失うと考えてよいのです。

時間のある若者こそ、複利効果のメリットを享受できます。

若い人には時間があります。

この時間こそが最大の武器です。

投資信託は基本的に放置です。

何もしないのが基本です。

時間をかければ、何もしなくてもこれだけ資産を増やすことができます。

このチャンスを決して無駄にしてはならないと考えます。

もちろん、若いうちは給料が安い。

そして手取りはもっと少ない。

少ない手取りの中で投資の分まで捻出するのは大変なことで、奨学金を借りていればより厳しいでしょう。

そのような状況でも、倹約に努め、しっかりと将来を見据えた投資を継続的に行うことが数十年先の将来のゆとりある暮らしのためには必要なことです。

若いうちは多少の無理が利くものですから、真剣に将来を見据えた資産形成に取り組むことが重要です。

 

なぜここまで警鐘を鳴らし、将来のための資産形成の重要性を強調してきたのか。

それは、社会保険の仕組みを考えればわかるものです。

手取りが安いのもこの悪しき社会保険料のせいです。

社会保険料に関してはこちらの記事で解説しています。

税金よりも高い社会保険料 保険料率18.3%から25.9%へ? 待ち受ける最悪のシナリオとは