月々の社会保険料は標準報酬月額によって決まりますが、これまでの記事では社会保険料の仕組みを解説し、等級を可能な限り上げない方がよいとの考えを述べてきました。
参考記事
社会保険料はどのように決定されるのか 3月~5月の残業に注意
しかしながら、業務量が多ければどうしても等級は上がってしまうものです。
等級が上がることによる支出増とそれに伴う年金給付額の増加による収入増を考え、保険料が上がった分を回収するには何歳まで生きることになるのかシミュレーションしてみましょう。
1階部分の国民年金(老齢基礎年金)は納めた金額ではなく加入した年数で決まります。
20歳から60歳まで、最大40年間納めることができ、その受け取る額は
2万円×納めた年数
で決まります。
一方で、2階部分の厚生年金は納めた額により決まります。
標準報酬月額が決まり月々の保険料が固定され、さらに賞与からも保険料率を掛けた分が天引きされ、強制的に納付することになります。
今回は標準報酬月額が上がり、それに伴って等級が上がった場合の手取り減少分を回収するのに何年かかるかをシミュレーションします。
標準報酬月額が20万~38万円の場合、2万円ごとに等級が上がっていきます。
社会保険料は概ね15%負担し、その分手取りが減ります。
2万円×0.15=3,000円
等級が1つ上がると月に3,000円、年間で36,000円程度手取りが減ることになります。
将来受け取る年金は、65歳から受け取る場合で考えると
20,000円×12×0.0055=1,320円
年間で1,320円増えることになります。
年間36,000円手取りが減る代わりに年間1,320円年金の受取額が増えるので、
36,000÷1,320=27.2727・・・
手取りの減少分を回収するためには27年以上かかる計算になります。
つまり、92歳以上生きなければ回収できないということです。
そこまで長生きできるかどうかわかりませんし、今後はさらに状況が悪化するものと考えられるため、極力保険料を抑えて投資によって資産を形成した方が賢いのではないかと考えます。
厚生年金は確かに納めた金額に比例して将来受け取る年金額も増えていきますが、基礎年金は加入した期間に比例して年金給付額が増える仕組みです。
そのため、高卒で社会人となった場合のような低所得者層に優しい制度であるといえます。
現代の若者が年金を受け取る頃には、公的年金は改悪に改悪を重ねて公的年金だけで暮らしていくのは困難になることが予想されます。
若いうちから数十年先を見越した正しい資産形成をすることで老後破産を回避することができますから、個人型確定拠出年金(iDeCo)、つみたてNISAといった制度を利用し賢く資産を築いてくことをお勧めします。
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