日銀の政策として、インフレ率2%を目標としていることについてはこれまでの記事で触れてきました。
「現金主義は安全か? インフレ率2%でどのように変わるのか」の記事の中で、インフレにしたい理由について少し触れていますが、今回の記事ではその理由についてさらに詳しく考察します。
まずは円高トレンドの解消についてです。
日本はバブル崩壊以降、20年以上の長期間デフレの状態が続いていました。
欧米ではインフレ率2%を目標としていたため、外国のインフレ率が長期間デフレの状態の日本のインフレ率を上回る状況が長期間続いていました。
インフレ率が高い通貨は安くなるため、相対的に日本の円は高くなります。
海外のインフレ率に合わせて2%を目標とし、円高傾向から脱するのが目的と考えられます。
円高は輸出企業の業績を悪化させます。
日本は輸出企業の割合が大きいため、日経平均は下がります。
インフレ率を他国と同程度にすることで円高トレンドを解消し、日本の株価上昇、景気回復を目的としていると考えてよいでしょう。
次に財政の健全化が考えられます。
物価が上がるということは、同じ物を買うのにそれまでより多くお金を払うことになります。
例えば、今まで100円で買ことができていた物に120円払わなければ買うことができなくなります。
つまり、お金の価値が下がるということです。
インフレにより、金額は変わらなくても実質的に国の借金を減らすことができます。
さらに、公的年金の実質的な支給額を下げるという目的も考えられます。
2004年、そのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組み(マクロ経済スライド)を導入しました。
この仕組みの導入により、物価や賃金の上昇率よりも給付額の上昇率は低く抑えられます。
2025年頃までは上昇率は物価や賃金の上昇率よりも年平均0.9%低く抑えられる見込みです。
今後はインフレによる物価の上昇率よりも給付額の上昇率を低くするため、実質的な年金給付額の引き下げと解釈することができます。
以上、国がインフレ率2%を目標とする理由について簡単に解説しました。
この目標は2013年から掲げられていたものですが、5年程経過した2018年6月現在はどのように変化しているのかを解説した記事を掲載していますので、ぜひご覧ください。
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