コロナ禍で派遣薬剤師の求人は壊滅状態に 現状と賢い対応策

コロナ禍における派遣薬剤師雇い止めの実態

2020年12月現在、派遣薬剤師の求人はほぼ壊滅的だった夏頃に比べれば増えてきているが、コロナ以前の求人数、待遇には程遠い。

地方でも時給4000円以上の求人は皆無であり、3000円以上出ればいい方であり、住居付きでも光熱費は自己負担という求人が多い。

首都圏に至っては求人自体がほとんど出ていないのが現状であり、あっても2000円台前半だ。

12月の繁忙期でも好転せず、まだ派遣に手を出すのはリスクが大きい上にリターンは望めないという状況だ。

 

新型コロナウィルスの流行が早かった北海道では4月以降の更新を見送って3月末での雇い止めが多く、本州では5月~6月での雇い止めが相次いだ。

派遣は通常2~3ヶ月毎に契約を更新する場合が多く、通常1ヶ月前までに更新するかどうか決められるが、北海道については2月中に4月以降の更新せずに切るという判断に至るほどの深刻な影響が出ていたのである。

本州においては、4月に全国的な緊急事態宣言が発出されたこともあり、4月以降の分について更新した期間の満了で雇い止めとなるケースが相次いだ。

2020年冬の現在、高時給の良い案件で就業できている薬剤師はコロナ禍以前からの派遣先で幸運にも更新してもらえているケースに限られている。

詳しくは後述するが、新規の派遣求人は数自体が激減していることに加え、時給単価が低く、住居付きの求人は望めない状況だ。

コストが高く、非正規で切りやすい派遣から切るのはどの業界も共通である。

 

コロナ禍における時給決定の実態

コロナ禍においては、フルタイムの派遣求人自体が壊滅的であり、日数少なめや半日以内等の穴埋め程度の求人が大部分である。

地方の住居付き派遣求人はごく僅かであり、1件の求人に対して紹介会社各社から数十名の薬剤師が殺到し、かなりの高倍率となる。

住居付き派遣だが、結局は近場の通える人で決まってしまう(会社側としてはマンスリーマンション等の費用を負担する必要がなくなる)ため、実質的に住居付き派遣の新規案件は皆無に等しい。

 

派遣社員の場合、派遣料の中から一定割合の金額を派遣会社が引き、残りを給与として受け取ることになるが、派遣料に対して派遣会社が引く金額の割合をマージン率という。

一般的な事務等の派遣の場合、マージン率は30%弱だが、ここから社会保険料の会社負担分(報酬の約15%程度)や有休分の給与、派遣会社の人件費、オフィスの賃料等の諸経費を差し引いた分が儲けとなるが、この儲けは一般的に派遣料の1~2%程度である。

薬剤師の派遣の場合、マージン率はもっと大きく、35%前後であり、単価が高いこともあり、1件あたりの収益は大きくなる。

マージン率が高い会社では40%を超えることもよくある。

 

例を示すと、派遣薬剤師の派遣料を5,000円/h一律で数社の紹介会社に提示しているにもかかわらず、同じ案件でもA社では時給2,800円~3,300円、B社では時給3,000円~3,400円、C社では時給3,300円~3,600円等と各社時給が異なる。

これはマージン率の違いもあるが、コロナ禍において派遣求人数が減少する状況下においては、特に大手の派遣会社が派遣料の安売りをしている影響もある。

前述の通り、派遣求人の倍率は数十倍の高倍率となるため、派遣を受け入れる薬局側が派遣薬剤師を選べる状況だ。

そのため、自社の派遣が選ばれるやすくなるように派遣料を安く提示している影響もあり、時給が下がっているのが現状だ。

このケースでは、派遣料5,000円/hのところ、4,000~4,500円/h程度まで下げていると考えられる。

以前は地方の派遣であれば、時給4,000円以上(派遣料6,000円/h以上)で住居付き(家賃及び水道光熱費会社負担)の求人が多かったが、相場は大幅に落ちている。

 

ある大手の派遣会社から派遣求人を紹介された際のやりとりの例だが、このコロナ禍においてはとにかく安いことが求められるため、次のような交渉がなされた。

「弊社の中でこの求人に応募される方は○○名います。

その中で、最低時給3,000円まで下げてもよいという方が〇名、2,900円の方が×名、2,800円の方が△名です。

どこまでなら許容できますか。」

という内容だ。

この場合では、2,800円よりも下げなければその会社の中で選ばれる可能性が極めて低いことを意味する。

さらに、他社からも応募が殺到するため、かなり競合してしまう。

つまり、待遇よく派遣で働くのは極めて困難であると断言してよい状況である。

 

大手は正社員化を進めて派遣切りを断行

大手のドラッグストアや調剤薬局のチェーンは、慢性的な人手不足から派遣で穴埋めしていた。

規模が大きく、ある程度の支出増にも耐えられるため、好待遇で派遣を雇っていた。

派遣を集めるためには、特に地方では派遣の時給を高く設定しなければならないため、正社員との待遇の差はある程度大きかった。

それほど大きな責任を負わず、正社員が抱えるような面倒な仕事をしなくてよい上にコストの面からほとんど残業をしなくてよく、残業した場合には法定通り1分単位で残業代が支払われる、正社員よりもずっと収入の多い派遣薬剤師は魅力的だ。

正社員と違い、サービス残業なんて存在しない。

しかし、このコロナ禍では状況が大きく変わり、大手もコストカットを急速に進めた。

最初にカットされるのは、コストが高く容易に切れる派遣だ。

金の掛かる派遣はどこの企業も使いたくないのが本音であり、人手不足を背景とし仕方なく雇っていたのだから、人員が余剰となればすぐに切るのである。

派遣を全て切ってしまうと、人手不足が深刻になってしまう企業も多い中、このような企業でも派遣切りを断行し、人件費の安い正社員の採用を強化している。

それでも、魅力の無い企業への応募はそれほど無く、現場は人手不足で苦しんでいるのだろうが、お偉いさんには関係ないことだ。

現場の負担が大きくなり過ぎて、結果的に離職者が大幅に増えれば派遣の活用を考えるのかもしれないが、現状は例年処方箋の増える冬のみ派遣で補強する程度に止まっている。

来年の春以降の更新は望みが薄いだろう。

 

コロナ禍で(元)派遣薬剤師はどのように働いているのか

運よく好待遇で派遣を続けられている薬剤師は限られており、多くは雇い止めとされたのではないだろうか。

では、雇い止めされた薬剤師はその後、どのような選択をしているのだろうか。

 

雇用保険に関する知識が乏しければ、期間を空けずに正社員になったり、有期雇用の契約社員として働き、派遣求人が戻るのを待っている人も多い。

高年収の契約社員、正社員求人から早々に埋まっていったが、企業側は採用に慎重になっており、特に長年派遣で働いてきた人や、歴が長いだけでスキルの無い人は採用されずに苦戦しているようだ。

企業側からすると、従順で使いやすい、安い労働者が欲しいのが本音なのだから当然の結果だろう。

ただ薬剤師免許を持っているだけの人は相当厳しい状況だ。

 

賢い人の場合、失業手当を受けるという選択をしたことだろう。

私は29歳で雇い止めとなったため、日額の上限が低く、給付日数が少ないため、それほどメリットは大きくなかったが、それでも基本手当と再就職手当を合わせて40万円以上受け取った。

非課税であることも大きいが、これに加えて移転費も受け取ってかなり遠方に引っ越して再就職している。

多くの派遣薬剤師は30歳以上であり、日額の上限が大きく、給付日数が多いため、私なんかよりもずっとメリットが大きいはずだ。

何かないかと考え、調べ、行動する者が得をするのである。

雇い止めであれば、手続きをすれば国民健康保険料の所得割の部分は前年の年収の3割で計算され、希望すれば国民年金保険料の支払いは免除される。

雇い止めの場合はこれらのメリットを享受した上で正社員や契約社員を考えた方が賢明だ。

 

派遣薬剤師のコロナ禍における現状について書かれた記事があまり存在しないため、真実を書かせていただいた。

ぜひ参考にしていただき、お役立ていただきたい。