今回は社会保険料について解説します。
給与明細を見て、思うことはないでしょうか。
厚生年金や健康保険の欄を見てください。
税金に比べて随分と高いとは思いませんか。
昇給しているのに手取りがあまり増えていないと実感されている方も多いかと思いますが、その要因の1つがこの社会保険料です。
厚生年金保険料が平成29年度まで毎年0.354%ずつ上昇し続けていたこともあり、特に高いと感じるのではないでしょうか。
「多く払っていればそれだけ多くもらえるんだからいいじゃん!」という方もいますが、果たしてそうなのでしょうか。
社会保険料の中で給与から天引きされるものは健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料です。
雇用保険料は、毎月の給与支給額に保険料率を乗じた額を給与から控除するため毎月変動し、賞与からも控除されます。
保険料率は一般の事業の場合、平成30年度は0.3%です。
協会けんぽの場合、健康保険料は都道府県により異なりますが、概ね10%程度です。
東京都は9.90%、北海道は10.25%と、多少の差はありますが、10%前後と理解しておけばよいでしょう。
介護保険料については全国一律で、平成30年の保険料率は1.57%です。
40歳以上65歳未満の健康保険の被保険者が負担します。
厚生年金保険料は毎年引き上げられてきましたが、現在の18.3%で固定になりました。
何も知らないサラリーマンには気付かれにくいよう、0.354%ずつ引き上げてきたため、初めて知った方は驚かれることでしょう。
2004年から13年間にわたり引き上げ、政府は100年後も所得代替率50%を確保すると国民に約束してきました。
所得代替率とは、現役世代の平均賃金に対する公的年金の給付額の割合であり、政府が公表する所得代替率とは現役世代の手取り収入(可処分所得であり、税、社会保険料を含まない)に対する公的年金の給付額(税、社会保険料込み)である点に注意しましょう。
つまり、分母は税、社会保険料を除いて小さくし、分子は税、社会保険料込みで大きくすることで割合を大きく見せるという数字のカラクリがあります。
結論を言うと、実質的に所得代替率が50%を下回るのは間違いないということです。
政府が公表する数字は過大評価されたものであると認識してよいでしょう。
さらに驚くべきことに2014年の財政検証で厚生労働省は、所得代替率50%を維持するには25.9%の保険料率が必要であるとし、今後さらなる引き上げの可能性が示唆されました。
財政検証は5年に1度行われるため、次は来年2019年です。
考えるだけでも恐ろしいのですが、この現実を受け止め、必要な対策を講じなければ健康で文化的な最低限度の生活を営むことさえ困難になるかもしれません。
話を戻しますが、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料については労使折半であるため、給与から天引きされるのは半分で、残りの半分は会社が負担します。
そのため、社会保険料は報酬の概ね15%程度天引きされます。
また、毎月変動するものではなく、標準報酬月額によって決まります。
有効求人倍率は2018年6月のデータで1.62倍となり、人手不足が深刻であるとの報道もありますが、この数字は非正規雇用を含むものです。
正社員に関しては全国で1倍を少し超える程度であり、地方では1倍を大きく割り込み深刻な状態です。
正規雇用が進まない理由の一つとして挙げられるのが、この社会保険料の負担が企業にとっても重いということです。
我々にとっても非常に重いのですが、雇う側も同じだけ負担するのですから、この社会保険料を抑えたいのは労使共通の考えであるのが一般的なのでしょうか。
正規雇用が進まないのは、社会保険料のかからない非正規で働いてもらうことでコストを抑えたいという狙いがあります。
ここまで社会保険料について解説してきましたが、将来的な給付額の減少、現役世代のさらなる保険料負担増を考慮すると、社会保険料の負担を抑えて可処分所得を増やし、その分で投資をするという選択が賢明ではないかと考えます。
公的年金は相互扶助の考えもありますが、合法的に搾り取るだけ搾り取られる一方でその分還元されないのであればこのような考えになるのは当然でしょう。
国の上層部の人間の無能さが招いたこの状況の尻拭いを罪の無い国民がするのはおかしいことです。
私達は最低限の義務を果たし、自分の身は自分で守るという姿勢でよいのではないでしょうか。
国家の犬にならなければならない理由はありません。
社会保険料を抑えるためには、社会保険料がどのように決まるのかを理解しなければなりません。
こちらの記事で解説していますので、是非ご覧ください。
社会保険料はどのように決定されるのか 3月~5月の残業に注意
社会保険料を抑えて投資に回すという選択が賢明であると述べましたが、税制面で優遇され、資産形成を後押しする制度として個人型確定拠出年金(iDeCo)、つみたてNISAがあります。
これらの制度は国が促進しているものですが、その理由についてはこちらの記事で解説しています。
なぜ国はiDeCoやつみたてNISAの積極的な利用を勧めるのか①
なぜ国はiDeCoやつみたてNISAの積極的な利用を勧めるのか②
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