薬剤師国家試験はここ数年で大きく変化している国家試験です。
国家資格は政策が大きく影響し、受験生や関係者は振り回されるものです。
薬剤師国家試験のここ数年での変化から読み解く今後の動きに関する考察や、おまけとして国家試験を受験する際の注意点について解説します。
コロナの影響による求人数の減少及び正社員の年収と派遣・パートの時給相場の下落から、今後の国家試験の合格者数がどのように変化していくのか、今後の見通しも掲載します。
最後に社会人になる前に学ぶべき事についても解説していますので、国家試験前で余裕のない人はこのブログをブックマークしておいて国家試験が終わった後に読んでみてください。
薬学部の学生の全体の傾向として、学校に依存していて高校生の頃から知識量の増加以外での大きな成長は見られず、学校で習うこと意外は何もわからない人が多いですから、学校では教えない最も重要な勉強を社会人になる前にしておくことをお勧めします。
6年制移行後(97回以降)の国家試験の変化
97回~100回は絶対基準で混乱を招き、質の低さが露呈
薬学部は6年制となり(2年延びたところで実はないが)、最初の国家試験(97回)と98回の国家試験は非常に簡単なものであり、高い合格率となりました。
これは4年制から6年制へと移行し、市場に新卒の薬剤師が供給されない期間が生じたために質が悪くても数を確保したかったという意向があったのではないでしょうか。
薬剤師国家試験の問題は基本的に知識を問うものであり、考える力はそれほど要求されません。
最近の国家試験の内容については考える問題が増えたという分析が多いようですが、それは複数の知識を組み合わせて少し考える程度であり、基本的に高い思考力を問う性質の試験ではありません。
そもそも薬学部の学生は学校依存型で指示通りにしか動けないマニュアル人間が大部分であるため、仮に論理的思考力を問う試験を実施してしまえば合格率は極めて低いものになってしまいます。
実際に医療現場でも知ってる知らないの問題がほとんどですから、国家試験もそのようなものです。
99回と100回については難易度が急に上がってしまいましたが、多くの受験生が知らない知識を問う問題が多かったというだけで、「難しい」というよりは「知らない」ことを問われたために得点が伸びなかったのでしょう。
薬剤師に何を求めているのかという疑問の声が多数あった、くだらない試験でした。
所詮国家試験は知識の多寡が問われる試験です。
100回までは絶対基準があり、総得点は65%以上であること、必須科目は各科目で50%以上、必須科目全体として70%以上という基準が設定されていたため(一般は各科目35%)、100回では必須の足切りで不合格となった受験生も多かったのです。
必須で多くの受験生が知らない、不必要な知識を問う問題を数多く出題したために生じた問題であり、補正対象問題11題及び不適切問題3題を全員正答という扱いにして無理矢理合格者数を増やす措置を講じる結果となり、市場に大きな混乱をもたらしました。
ここで、薬剤師国家試験の質の低さが露骨に明るみになってしまいました。
国家試験としていかがなものでしょうか。
かなり不公平感も大きく、受験生も市場も振り回されました。
101回からは相対基準の導入により数のコントロールが容易に
101回以降は相対基準が導入され、国が薬剤師の数をコントロールできるようになりました。
必須科目の全体で70%という基準は変わりませんが、簡単な必須で7割も取れないということは全体で65%以上の得点はほぼ不可能であるため、特に影響があるわけではありません。
必須の各科目での基準が30%以上に引き下げられたという点が大きいでしょう。
1科目10題の出題で3問正解すれば足切りクリアです。
五肢択一問題ですから、確率的に2問は当たるので、ほぼ足切りは無いに等しくなったという点も大きな変化です。
当面は混乱を避けるために総得点65%以上であれば簡単な問題が多く合格者数が増えても合格とするのですが、これにより101回は大量に合格者が出ました。
101回は99回と100回で不合格となった受験生が溜まっていたため、非常に簡単な問題が多く簡単に合格できる在庫一掃セールとなりました。
本格的に相対基準が用いられたのは102回からで、総得点65%よりも少し下げたところが102回・103回の合格点となりました。
当面の合格者数の目安は9,000人程度
相対基準が本格的に用いられた102回及び103回のデータから、当面の国家試験の合格者数は9,000人程度、難易度としては新卒合格率85%程度とするのが適切で、このように合格者数を調整するものと考えられます。
104回については、問題が全体的に平易であったことと65%以上得点できていれば合格としなければならない制約があるため、合格者が1万人を超えてしまいました。
105回は新卒合格率を85%弱とし、合格者数が10,000人以内になるよう合格ラインが大幅に引き下げられました(得点率61.7%)。
102回 合格者数 9,479名 新卒合格率 85.06%
103回 合格者数 9,584名 新卒合格率 84.87%
104回 合格者数 10,194名 新卒合格率 85.50%
105回 合格者数 9,958名 新卒合格率 84.78%
104回からは禁忌肢問題が導入される
104回からは禁忌肢問題が導入されますが、国家試験はブラックボックスで透明性が低いため、どれが禁忌肢かなんてわかりません。
医師国家試験においても、禁忌肢は都市伝説といわれていたようなのですが、ある調査から、その存在が明らかになりました。
参考までに医師国家試験の禁忌肢問題に関する記事のリンクを貼ったので気になる方は読んでみてください。
どのような選択肢に注意すべきか、参考になるでしょう。
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106回からは新過程 102回以降の変化を見逃すな
106回以降は新過程の内容で、色々と変わる部分もあるのでしょうけど、いきなり大きく変わるわけではありません。
102回以降少しずつ変化が現れており、今後はこのような出題を増やすということを示唆する内容となっています。
過去問を分析し、その変化を読み取り対策しましょう。
地方ではまだまだ薬剤師は不足しているので、当面は合格者数を大きく減らすことはないと考えられます。(2020年コロナ禍で状況は一変しました。)
コロナ禍で合格者数、合格率に変化はあるのか
106回からは国が合格者の数を自由にコントロールできるようになるのですが、コロナ禍の2021年2月現在の薬剤師求人の状況を鑑みると、合格者数をある程度減らすことになっても不思議ではありません。
これまで、地方では特に薬剤師が不足していたため、派遣薬剤師で穴埋めすることが常態化していました。
しかし、多くの企業は、このコロナ禍で外来患者は定期処方+α程度に激減したため薬剤師が余るようになり、直接雇用ではない薬剤師から契約を打ち切り、雇い止めとしました。
次に直接雇用のパート薬剤師のシフトを減らしたり、契約を更新せずに正社員のみを残す等して人件費の削減を行いました。
人員が不足していても、経営状況の悪化から非正規を切るという状況に追い込まれている企業は多く、正社員の雇用を守るのがやっとという状況の保険薬局が多いのが2021年2月現在の状況です。
正社員の求人に関しても、待遇の良い高年収求人は激減し、残念ながら40代以上の薬剤師は誰でもできる単純作業しかできないような方が多いため、何社受けても受からないという方が続出しています。
4年制卒の薬剤師の転職はかなり厳しく、企業は人の採用にはかなり慎重になっています。
薬価の引き下げや今後の診療報酬の改定で年々経営状況は厳しさを増すため、この業界はコスパが悪く将来性の低い業界であると断言できます。
この状況で転職が成功する方は高いスキルや専門性を有している方や将来性の高い方に限られます。
このような状況であるため、現在の薬剤師の需要を考えると、合格者数をこれまでよりも減らす可能性は十分に考えられます。
合格ラインを65%以上に引き上げるのはハードルが高いため、正答率が低くなるような無茶な問題を増やして合格ラインを必要な数が出るように引き下げるという無難なやり方でくると考えられます。
ただし、106回は新課程1回目ですから、大学入試共通テスト(旧大学入試センター試験)等のように、1回目は平易な問題が多くなる可能性が高いと考えられます。
国が実施する試験では、新課程1回目は簡単になることが多い傾向にあります。
65%以上得点できていても油断はできません。
106回からはこれまでと違い、65%以上得点できていれば合格という保証はないため、国家試験後の就職活動はこれまでよりも難しくなるでしょう。
合格ラインが読めないため、自己採点であまり得点できなかった人が内定を辞退するケースは減少すると考えられ、2020年夏~秋頃はコロナ禍における今後の見通しが甘く、内定を多く出していた企業が一定数あると考えられるのためです。
107回以降の受験生については、保険薬局やドラッグストアは従来のように受ければ受かるというものではなくなると考えておくべきです。
薬剤師が余剰になってきているこの状況では、各個人の資質をよく見て採用の可否を決める企業が増えてくるでしょう。
学歴フィルターも考慮すると、低偏差値の大学の学生は厳しい就活になると考えられます。
例えば、保険制度についてよく学び、「自分はこのように収益に貢献できる」等のアピール材料がなければ厳しいでしょう。
求人数の減少と相関して国家試験も厳しさを増していくと考えられるため、就活も国家試験も十分に準備しておくべきです。
新卒合格率が現在の85%程度から、さらに10%以上下落しても合格できるように準備しておかなければ安心はできません。
詳しい派遣求人の状況等については、こちらの記事で解説しています。
ついでに、病院薬剤師の過酷な現実についても気になる方は読んでみてください。
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国家試験受験の際の注意点
時間割を見ると休み時間が長く設定されていますが、実際には試験開始時間のかなり前から拘束されます。
実質的な休憩時間は30分位でしょうか。
会場や監督者によって異なる部分もあるかもしれませんが、毎度同じ注意事項を聞かされ(しかも棒読み)、顔写真の照合やら机上の物、ひざ掛け等のチェックがあり、そのあとは10分~15分くらい何もせずにじっと開始時間を待つという苦行が待ち受けています(青本を見る等できません)。
国家試験は無駄な時間との戦いです。
時計の無い会場が多いため、時計は必ず持って行きましょう。
女子トイレはかなり混雑し長い列ができるので、試験終了後すぐに駆け込む等の対策を考えた方がいいでしょう。
センター試験のように追試験があるわけではないので、電車で通える距離の会場でも会場付近のホテルに宿泊する人は多いかと思います。
試験は土日に実施されるため、イベントと重なってしまうと付近のホテルは満室になってしまいます。
102回は2月25日の国公立大学の前期日程とイベントが重なった福岡の会場付近ではホテルが全く予約できない状態だったそうです。
東京のように複数の会場がある地域の場合、どこの会場になるかは2月にならないとわかりません。
現役生であれば大学を通じて知ることになるのですが、2月になってからでは遅いので、都内4つの会場全ての近くのホテルを予約している人もいました。
試験当日の事も知っておくと少し不安が和らぐでしょう。
無駄な時間を長く過ごすことになる点は覚悟しておいてください。
社会に出る前に学ぶべき事
学校では教えない事こそが本当に重要で、知らなければ何十年にもわたって損をする人生を送ることになります。
知るべき事は無数にあるのですが、まずはお金の勉強や労働関係法規、労働者の権利などを勉強しましょう。
関連記事では社会に出る前に学ぶべき内容についてブログ内の関連記事を列挙しています。
国家試験の勉強に余裕のある人は読んでみてください。
余裕のない人は国家試験が終わったあとに読んでみてください。
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