社会保険料はどのように決まるのかを解説します。
まずはこちらの記事を読み、社会保険料について理解した上でこの記事の続きを読むことをお勧めします。
税金よりも高い社会保険料 保険料率18.3%から25.9%へ? 待ち受ける最悪のシナリオとは
毎月天引きされる社会保険料ですが、雇用保険料についてはそれぞれの月ごとに変動しますが、厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料については標準報酬月額によって決まり、一定の金額が天引きされることになります。
標準報酬月額とは4月~6月の各月の総報酬の平均を算出し、標準報酬月額表に当てはめて決定されるもので、等級があります。
この等級によってその年の9月から翌年8月までの社会保険料が決定します。
これを定時決定といいます。
この報酬とは基本的には月の総支給額と考えてよいのですが、税と勘違いしやすい項目もあるため気を付けてください。
基本給や役職手当等の固定的賃金に加え、月々変動する残業手当や宿日直手当て等ももちろん含まれます。
さらに、非課税である通勤手当も含まれるため注意が必要です。
通勤手当は非課税だからお得だと勘違いしている方もいるようですが、確かに税の面では課税対象とならないのですが、社会保険料には影響するので、通勤手当が高い人はそれだけ手取りが減ることになります。
通勤手当が高い人は自分の儲けにならない一方で報酬には含まれるため、社会保険料が上がり手取りが減るのですが、加えて日々通勤に伴い失われる時間や労力も考慮したいところです。
この仕組みのいやらしい点は、4月~6月の給与で決まるという点です。
残業代は翌月支給が一般的ですから、3月~5月の残業代が影響するということです。
年度の変わり目で業務量が多くなるために残業代が高くなってしまいます。
この業務量が一般的に多い時期に設定することで、合法的に多く保険料を搾取する仕組みなのです。
3月~5月の残業が多くなり、標準報酬月額が上がり固定されたものの、その後業務量が減り、それに伴って残業代が減ってしまうと月々の給与に見合わない額の保険料が天引きされ、生活は苦しくなります。
そのため、社会保険料を抑えるためには3月~5月の残業を減らさなければなりません。
それがわかっていても実際に残業を減らすのは難しいでしょうから、この仕組みは国民から保険料を搾り取るためによく考えられていると思います。
ただし、以下の場合には特例的に通常の定時決定が行われない場合があります。
当年4月から6月までの3か月間に受けた報酬の月平均額から算出した標準報酬月額と、前年の7月から当年の6月までの間に受けた報酬の月平均額から算出した標準報酬月額の間に2等級以上の差を生じた場合であって、当該差が業務の性質上例年発生することが見込まれる場合
この特例がどの程度適用されるかはわかりませんが、よく一般的に3月~5月の残業は控えて社会保険料を抑えたいということが言われていますから、該当しないケースが多いのでしょうか。
逆を言えば、3月~5月の残業を抑えてそれ以後は残業を多くしても、天引きされる社会保険料の額は変わりません。
ただし、昇給の際には注意が必要です。
随時改定という仕組みがありますが、これには落とし穴があります。
随時改定についてはこちらの記事で解説しています。
標準報酬月額表に当てはめるという点についても理解しておきましょう。
東京都の標準報酬月額表を示します。
例えば、22等級、標準報酬月額30万円の場合ですが、報酬月額が290,000~310,000の場合にはこの等級になります。
つまり、下限の29万円でも上限の31万円でも負担する保険料は同じです。
そのため、その等級の上限ギリギリに抑えるのがベストです。
月の稼ぎが20万円~38万円ならば、2万円毎に等級が変わりますから、等級が1つ上がると概ね3,000円程度月の手取りが減ります(介護保険料の負担の有無で多少は変わります)。
等級が1つ上がるだけで年間36,000円前後も手取りが減ってしまうことになります。