年金だけでは2000万不足のウソ 昔から政府の見立てはかなり甘い そしてそのことを学習しない愚かな国民

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公的年金は改悪の一途を辿る

金融庁が公表した、年金だけでは95歳まで生きるには夫婦で2000万円不足するという数字。

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この数字を鵜呑みにしている国民がほとんどで呆れてしまうのだが、2000万円では明らかに足りない。

もちろん半世紀以上も先の未来は予測できないが、この問題を考える上で考慮すべき点がいくつも抜けているのではないかと思われる。

 

そもそも、2004年の年金法改正時の「100年安心プラン」からわずか15年でこのお粗末なデータが示されたのだ。

100年安心とするために、厚生年金保険料率は毎年0.354%ずつ引き上げられ、現在は18.3%で高止まりしている状態だ。

さらに、マクロ経済スライドという、物価や現役世代の賃金の上昇率よりも給付額の上昇率を抑える仕組みが導入された。

詳しくは関連記事で解説しているので、参照していただきたい。

 

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これだけの改悪を行うことで、100年この制度を維持できるとしていたが、たった15年で安心は失われたのである。

 

政府が示す数字は信用できないということを学習できない国民

この国の多くの国民に欠けている極めて重要な能力がある。

疑いの目で見て、批判的に吟味することで客観的に物事を判断する能力だ。

諸悪の根源は、学校教育において従順で使いやすい労働者という規格に仕上げられているためである。

気になる方は関連記事を読んでいただきたい。

年金問題とは離れるのでこれ以上はこの記事で学校教育問題には触れない。

 

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法を超越した「常識」という従順さの押し付け 学校教育の真の目的とは

 

国民は、何度も政府の示す数字に騙されるという事例を経験してきている。

しかし、過去の失敗から学習することができないのがこの国の国民だ。

今回もまた、政府の示す数字を鵜呑みにして数十年後に困り果てることだろう。

いい加減、学習することを覚えるべきではないだろうか。

 

2000万円不足に考慮されていない様々な点を整理

年金の問題に関して言えば、夫婦で2000万円の不足という試算には考慮されていない点がいくつもあるのではないだろうか。

 

そもそも、この数字は現在の給付水準で計算されているものであり、マクロ経済スライドの発動による所得代替率の低下が考慮されていない。

65歳からの30年という長い時間の中で、当然、給付水準は徐々に下がり続ける。

この2000万円という数字は、今の若い世代ではなく定年が近い世代の場合であるという点も忘れてはならない。

若者はこの比ではない程不足し、貧困老人で溢れるのだ。

 

考え付く限り、考慮すべき点を示す。

まずは物価の上昇による相対的な資産価値低下のリスクだ。

物価が上がれば、相対的にお金の価値が下がる。

そしてマクロ経済スライドという仕組みがある以上、相対的な給付額は引き下げとなる。

金融資産を現金や預貯金で保有しているのならば、相対的な資産価値の低下は避けられない。

例えば、物価が2倍に上がると、保有する資産の額はそのままであるにもかかわらず、支出は2倍になるのだ。

すると、資産が減るスピードは2倍になる。

給付額は額面では増えるものの、物価の上昇分全てはカバーできない。

 

次に、今回の金融庁の衝撃的なデータの公表を受けて、若者は結婚しなくなり、子供を産まなくなるという問題だ。

今の若者は昔とは大きく価値観が異なり、結婚=幸せという価値観を持っていない人が多い。

すると、少子化が進むことになるが、今回の金融庁の発表を受けてこの問題がますます深刻になる。

若者が結婚しない背景には経済的な問題がある。

現在の大学生の仕送り額は非常に少額であり、その影響で1990年に2460円だった1日の生活費は、現在ではわずか677円と極めて少額であり、貧しい。

働くようになってからも、奨学金の返済があるために生活のレベルはそれほど上げられない。

若者の貧困問題は深刻であり、今回の金融庁のデータ公表を受けて将来の不安が大きくなり、さらに結婚が遠のく。

結婚したとしても、出産は厳しい。

結果として、今の若者が支えてもらう側になった頃には支えてくれる人が極めて少ない状態となり、賦課方式である公的年金では「柱」ではなく「おまけ」程度にしかならないのだ。

 

次に、定年退職までの資産形成について考える。

老後のための資産を形成する上で、退職金は考慮しない方がいい。

1997年には平均で3000万円以上あった退職金は、現在では2000万円にも満たない。

法的には退職金は支払う義務がないため、退職金の規定の存在しない企業も多いのだが、退職金は減少の一途を辿る。

法的には、労働者にとって不利益になるように規定を変えることはハードルが高いのだが、現状として大幅に減少している。

数十年先に退職金があるとは限らないし、あったとしても微々たる額にしかならないことを覚悟した方がよい。

 

昔と比べて可処分所得が少ない中で奨学金という借金の返済を抱え、さらには年功序列・終身雇用の崩壊、45歳で会社を追い出されるリスクがある中で数千万円の資産形成は困難だ。

しかし、これが現実であり避けられるものではない。

政府は長く働かせようとするが、60歳を過ぎれば最低賃金で働くことを覚悟しなければならない。

さらに言えば、早期退職制度で会社を追い出された人は、それ以後は低賃金で働くことを覚悟しなければならない。

十分に資産形成できるのが45歳までであるとすれば、結婚や出産は不可能だろう。

子供が一人前になる前に会社を追い出されてしまっては、それ以後育てるのは困難になってしまう。

行政は助けてくれないし、自己責任として切り捨てられるのだ。

もう少子化は止まらない。

そもそも、職にありつけない可能性も考えなければならない。

近年、人件費の高騰や人手不足の問題があり、機械化が急速に進められている。

単純作業の大部分はAIに代替され、人の仕事はクリエイティビティの高い仕事が中心になると考えられる。

機械ができないことが人の仕事になるというイメージだ。

労働関連法規の遵守状況が厳しくチェックされるようになり、人を都合良く使うことができなくなってしまう上に、人を雇うということはあらゆるリスクを抱えることになる。

機械であれば、ずっと働かせることができる上に文句も言わない。

機械にできることは機械にさせるという考え方は当然だろう。

能力の低い労働者は必要とされなくなるという未来を覚悟しなければならない。

 

老後は2000万円で年金の不足を補えるのか?

次に、老後の資産を切り崩す生活について考える。

平均して100歳近くまで長生きするということは、がんなどの病気になるリスクを抱える。

人生50年時代にはがんになる前に死んでいたのだが、現在のように長生きする時代においては重い病気は避けて通れない。

誰もが何らかの病気を抱えて生きることになる。

私は病院に勤めているのでよく分かるが、高齢者は病院に通うことが仕事のようなものだ。

ここで、頭を抱えるのは医療費の問題である。

将来的には、高齢者でも3割負担は免れないだろう。

現在でもそれだけ医療費は膨れ上がっている。

現役世代は4割、5割負担になるかもしれない。

老後は大きな病気を抱えて予想外に大きな出費が生じる可能性があるのだ。

その点も考慮に入れなければならない。

数十年後の日本は、医療難民で溢れるようになるのだろうか。

 

色々と考えると、まもなく定年を迎える世代は1人2000万円でも足りないだろう。

病気のリスクも考えると、1人3000万程度必要になるのではないだろうか。

若者の場合、1人5000万程度は覚悟した方がよいだろう。

これはあくまで厚生年金を受給する前提であって、老齢基礎年金のみの場合は桁が1つ大きくなる。

 

苦しい懐事情の中でどのように資産を形成すべきか

昔のいい時代を生きてきた世代と若い世代では世代間格差があまりにも大きく、資産形成は容易ではない。

しかし、これが現実であり、受け入れなければならない。

資産形成や働き方についてよく考え、将来の安心は自分の力で手に入れなければならない。

 

政府が税制面で優遇し、促進している2つの制度をご存知だろうか。

個人型確定拠出年金(iDeCo)、つみたてNISAである。

今後は制度の拡充、期間の延長、新たな制度の登場も考えられ、資産を運用しながら取り崩すというやり方ならば、資産寿命の大幅な延長が可能である。

このような制度を活用して賢く資産形成しなければ、貧困老人になってしまうだろう。

貧困老人で溢れてしまっているため、生活保護などで助けることは厳しい財政事情となっていることが予想され、自己責任として切り捨てられる可能性が高いだろう。

次に示す関連記事の下部に、これらの制度の解説記事を示している。

時間がお金を生むという仕組みであるため、可能な限り早期から取り組むことが重要だ。

 

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