最新情報追記のお知らせ
消毒用エタノールが新型コロナウィルスにも有効であると広く認知され、2020年5月現在は需要が大きく伸びている一方で、供給が追いつかない状況が続いています。
そこで、現在の流通の情報、消毒に有効な濃度を根拠とともに示した上で代替品を紹介することにしました。
この記事の最後に追記していますので、ご確認ください。
私は病院、保険薬局、ドラッグストアでの勤務経験のある薬剤師です。
2020年2月現在、新型コロナウィルスの感染が拡大し国民の恐怖心が大きくなっているのを実感します。
消毒薬に関する問い合わせが多く、消毒薬の選択や消毒効果を高める正しい使用法、消毒以外の便利な活用方法についてはあまり知られていないようなので、ご紹介します。
最後まで読んでいただき、常備を検討していただけると幸いです。
コロナやインフルに有効な消毒薬は消毒用エタノール
コロナウィルスやインフルエンザウィルスはエンベロープという膜を有するウィルスであるため、最も有効なのは消毒用エタノールです。
よくアルコールが欲しいと言われるのですが、アルコールは特定の構造を有する有機化合物全ての総称であるため、無数にあります。
店頭でお探しの際は消毒用エタノールが欲しいと伝えてください。
他にもアルコールの中で70%イソプロパノールも手指の消毒に用いられますが、こちらは消毒用エタノールに比べて毒性が強く、脱脂作用が強いため手が荒れやすいため、消毒用エタノールの使用をお勧めします。
無水エタノールは消毒効果なし 適切な濃度は
単に「エタノール」ではなく「消毒用エタノール」と何度も記述していますが、これには意味があります。
消毒用エタノールの濃度は76.9~81.4v/v%であり、概ね80%前後のこの程度の濃度が最も消毒効果が高いのです。
v/v%は溶液100mL中の溶質の体積(mL)を示した単位です。
濃度が高いほど消毒効果が高いものと勘違いし、無水エタノールを買おうとする方もいらっしゃいますが、上記内容を説明の上、濃度調製が必要であり、例えば水1Lとエタノール1Lを混ぜても2Lにならないため(実際には少し体積が小さくなる)単純ではないこと等を説明すると、納得して既に濃度調製されている消毒用エタノールを購入されます。
厳密に濃度調製する必要はなく、ある程度大雑把で問題ないのですが、少々面倒ではあります。
消毒用エタノールが手に入らない状況が続く中、無水エタノールはどうにか手に入るという場合には、精製水も一緒に購入し、無水エタノール:精製水=7:3の比で混合して濃度調製するとよいでしょう。
比率については4:1等と紹介しているサイトもありますが、多少濃度が薄くなっても消毒効果はさほど変わりませんので、エタノールが貴重であるこの状況下においては少し薄めにして大事に使った方がよいでしょう。
実は無水エタノールはすぐに揮発してしまうため、ほとんど消毒効果はありません。
脱脂作用が強く水分を奪うため、人体には使用しないものです。
主な用途としては水に弱い精密機器などの洗浄に用います。
消毒するためには接触する時間が一定程度必要であるため、少し水分が必要なのです。
同じ消毒用エタノールでも値段が違うのは酒税の差
同じ500mlの消毒用エタノールが複数種類並んでいて、値段が数百円違う場合があります。
結論を述べると、酒税の差です。
単なる消毒用エタノールは薄めると飲むことができるため、酒税がかかってしまいます。
一方で、「消毒用エタノールIP」という製品は、飲用にできないようにするためイソプロパノール等が添加されています。
そうすることで、酒税がかからないため、安く販売されています。
IPとはイソプロパノールのことです。
消毒効果に変わりはないため、在庫があれば安い方を購入するとよいでしょう。
消毒効果を高める正しい使用方法
ただ消毒すれば十分というわけではありません。
消毒薬の消毒効果を高めるための方法もよく知られていないようなので、ご紹介します。
皮脂や血液等の有機物存在下では消毒液の消毒効果が落ちてしまうので、まずは石鹸を使用してよく手を洗い、汚れを落としましょう。
そして水気をよく拭き取り、消毒用エタノールをよく刷り込みます。
前述の通り、消毒用エタノールは消毒効果が最も高い濃度に調製されているため、手に水分が残っている状態で消毒用エタノールを使用しても薄まってしまい、消毒効果が落ちてしまいます。
消毒用エタノールは拭き取らずに揮発するのを待ちます。
接触する時間が長いほど消毒効果が高まるため、揮発するまで少し待ちましょう。
用途いろいろ 便利なエタノールの活用法
消毒用エタノールは手指や環境消毒以外にも様々な活用法があるため、各家庭に数本の備蓄があってよいものです。
ある程度期限が長いため、私は2~3本常備しています。
エタノールは炭素数2の1級アルコールであり、親水基の影響が大きいため、大部分は水溶性です。
有機溶媒でありながら、かなり水に溶けやすい性質を有しています。
しかし、ある程度は脂溶性で多少油に溶ける性質もあります。
そのため、食事をするテーブルやキッチンの掃除で使用すると、油汚れを落とすことができ、消毒もできるため、大変重宝します。
風呂場で霧吹きを使用して天井や壁に噴霧することで、カビの発生を抑制する効果があり、掃除が楽になります。
刺激性が強く粘膜には適用できない消毒薬であるため、目や鼻、口を保護するためゴーグルやマスクを着用して作業すると安全です。
一部を除き、プラスチック製品や金属等に油性のマジックで間違えて書いてしまった場合でもエタノールで落とすことができます。
現代社会では誰もが持っているスマホの液晶も、消毒用エタノールで皮脂汚れを落とし綺麗にすることができる上に、消毒もできます。
スマホはかなりの頻度で触れるため、想像以上に汚れているはずです。
主たる感染源の1つと考え、清潔に保つようにしましょう。
エタノールで全体を拭いて、液晶だけは乾拭きをすることで揮発した後に残る核などで液晶が白っぽくなるのを防ぐとよいでしょう。
個包装の小さいアルコール綿をカバンに入れておくと、外出先でも手軽に使用できるため、便利です。
誰かにスマホの画面を見せたときに汚れていると嫌な思いをさせてしまうため、すぐに使用できるように携帯しておくとよいでしょう。
個包装であれば衛生的でコンパクトであるため、カバンに入っていても邪魔になりません。
このように、消毒以外にも様々な用途で便利に使えるものであるため、消毒用エタノール、消毒用エタノールを含むアルコール綿は常備しておくと非常に役に立ちます。
現在は店頭での入手が困難であるため、通販での購入をお勧めします。
下にリンクを貼っていますので、クリックするとそれぞれのページに飛びます。
消毒用エタノール
アルコール綿
わからなければ薬剤師等の専門家に相談を
消毒薬は使用方法を間違えると人体に有害であったり、非常に危険な薬品です。
エタノールは刺激性が強いため、粘膜には使用できません。
また、揮発性が高いため、火気厳禁です。
消毒薬も様々な種類があり、人体に有害であるため環境消毒にしか用いないものもありますし、効果のあるウィルスや細菌も異なります。
例えば、エタノールはノロウィルスには効果がありません。
わからなければ、薬剤師に相談してください(薬剤師のレベルはピンキリだが)。
使用目的に応じて適切な消毒薬を紹介し、正しい使用方法を教えてくれるはずです(薬剤師のレベルによる)。
医薬品は使用方法を間違えると危険で害のあるものと認識していただき、わからなければ専門家に相談して正しく使用しなければなりません。
しかし、他の客からの相談に応じている時に割り込んで話しかけてくる方が一定数いるのは残念です。
接客中には割り込んで話しかけないようにしていただき、順番を守るようにお願い致します。
こちらも人間ですから、態度の悪い客に対しては有用な情報を提供しようという意識は希薄になり、最低限度の説明しかしないため、役に立つ情報が得られなくなってしまいデメリットが大きいのではないかと思います。
数年に一度はパンデミックの状態になるものと考え、しっかり備えておけばこのような事態になっても困りませんよ。
3月8日時点の最新情報と有効濃度、代替品について(追記)
ドラッグストアではこの1ヶ月程度入荷が全く無い状況であり、一般市民が消毒用エタノール等の製剤を手に入れるのはマスク以上に難しい状況です。
そのため、あらゆる施設で入り口に置いてある消毒薬のボトルごとの盗難、或いは中身を抜き取るという事例が多発しています。
まずは、エタノールを持っている方向けに、エタノールが消毒効果を示す最小の濃度をお伝えします。
無水エタノールや消毒用エタノール等、濃度は様々ですが、この貴重なエタノールを長く使えるようにするために、精製水で薄めて濃度調製して使用することをお勧めします。
論文によって効果を示す濃度については様々ですが、ここではシオエ製薬株式会社の消毒用エタノールのインタビューフォーム(IF)の情報を示します。
インタビューフォームとは、日本病院薬剤師会が製薬企業に作成と配布を依頼する、薬剤師向けの医薬品解説書の一種であり、医薬品の基本的な情報を記した添付文書を補完するものです。
製剤の安定性や配合変化等の詳しいデータが示されており、病院薬剤師はこのようなインタビューフォームや様々な文献の情報を基に薬学的な判断をした上で医師や看護師等からの質問に回答したり情報提供を行います。
以下、インタビューフォームからの引用です。
エタノールの殺菌力上の最適濃度は大体50~80%の間が適当とされている。また細菌の芽胞に対してはほとんど作用しないか又は非常に弱いことが認められている。Priceの報告によれば、10~20%では10分間以上作用させないと効力はなく、しだいに濃度を増すにつれ殺菌力は強く、60~90%の間では最初の数秒間で強力に殺菌するが、90%以上では作用が弱くなることを示している。したがって本剤の濃度約70%は至適濃度と称してよく、この濃度においては皮膚に対しての拡散及び揮発性も適度で、表皮を損傷する事もなく、脂質を溶解し去ることもなく無害である。
以上の内容から、消毒用エタノールの濃度が最も適していると評価できますが、60%以上であれば数秒で強力に殺菌することが可能であることを考慮すると、消毒用エタノールをさらに薄めても問題ないと考えられます。
また、エタノールの殺菌力上の最適濃度は概ね50~80%の間が適当であるということから、消毒用エタノールの代替品として有効な商品が見つかりましので、紹介します。
クレベ&アンド ウイルス・菌除去スプレー(キッチン用)
この商品の成分は、
エタノール(58.00%)、グリセリン脂肪酸エステル(0.30%)、 フィチン酸(0.05%)、グリセリン(0.20%)、精製水(41.45%)
であり、エタノールの濃度としては問題ない点や、それ以外の成分の大部分は水であり、グリセリンは手指消毒用のエタノール製剤に使用される保湿剤であるため、この商品は手指消毒に使用できると考えられます。
この商品のパッケージを見ても、消毒に使用できるものとは分かりません。
しかし、成分をよく見ると消毒に使用できるものであることが分かるという商品であり、商品を置いてある場所の問題もあるかもしれませんが、こちらから紹介しなければあまり売れない商品なのです。
このメーカーは他にも手指の消毒用の商品もありますが、こちらはエタノールを添加物として含む程度であり濃度は示されていません。
恐らくは微量に含む程度であり、ベンザルコニウムを主成分としています。
ベンザルコニウムは新型コロナウィルスに効果があるというエビデンスはありませんので、新型コロナウィルスに対して使用する目的であれば適していません。
ただし、インフルエンザに対してベンザルコニウムは有効です。
意外かもしれませんが、成分を分析したところ有効なのはキッチン用です。
これらの情報を踏まえた上で購入を検討されてはいかがでしょうか。
通販での状況を確認したい方はリンクをクリックして確認してください。
エタノールが80%近い高濃度の酒も各酒造メーカーが販売するようになってきているので、このような酒も代替品として検討してもよいのではないでしょうか。
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