2019年財政検証の結果が示す年金の悲惨な未来と政府のその場しのぎ体質

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政府が示す数字と2014年財政検証の結果を整理

参院選が終わってようやく公表された2019年財政検証結果であるが、選挙前に見苦しく言い訳をして公表せずに選挙後に公表を先送りした段階で、選挙結果に多大な影響を与えるほどに悲惨な結果なのだろうと想定していたが、現実はその想定よりも酷いものである。

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まずは、前回の財政検証の結果から整理したい。

政府が示す数字のカリクリや前回2014年財政検証の結果について、詳しくはこちらの記事に示しているが、簡単に整理した上で2019年の財政検証の結果を分析する。

 

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前回の財政検証では、厚生年金保険料率を現在の18.3%から25.9%へ引き上げなければ、所得代替率50%を維持できない可能性が示唆された。

所得代替率とは、現役世代の平均賃金に対する公的年金の給付額の割合であり、政府が公表する所得代替率とは現役世代の手取り収入(可処分所得であり、税、社会保険料を含まない)に対する公的年金の給付額(税、社会保険料込み)である点に注意が必要だ。

つまり、分母は税、社会保険料を除いて小さくし、分子は税、社会保険料込みで大きくすることで割合を大きく見せるという数字のカラクリがある。

ただし、分母は現役男子の平均手取り収入額で示されている点にも注意が必要だ。

収入は女性よりも男性の方が多い点や、中央値ではなく平均で示されていることを考えると、分母は実際よりも大きくなっていると考えられる。

すると、所得代替率としてはその点だけを考えれば低く算出されてしまうので、政府がなぜ現役男子の数字を用いているのかは不可解だ(所得代替率を高く算出したいはずだ)。

共働きではなく、夫が働き妻は家事をするという昔の一般家庭のイメージが現在の老夫婦の年金給付額の実態に合致するのはわかるが、女性の社会進出が進んだ現在の現役世代がリタイアする頃にも同様の方法で所得代替率を算出するのだろうか。

収入の平均と中央値の乖離については関連記事に示すので、気になる方は読んでいただきたい。

さらに問題なのは、分子にあたる給付額が夫婦2人分で示されているのに対して分母は男性1人であるということだ。

夫婦で老後を過ごすという前提で試算されていて、単身者の生活はより厳しくなるだろう。

生涯未婚率が今後さらに高まる中で、この点はよく考慮しなければならない。

夫婦で老後を迎えたとしても、先にどちらかが死ねばその後は1人で生きていくことになるということも忘れてはならない。

理解していただきたいことは、夫婦での実質的な所得代替率が50%を下回るのは避けられないということだ。

このように、政府が示す数字は批判を避けるための小細工がされていて実態とは乖離したものであるという認識を持っていただきたい。

 

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2019年財政検証の結果で示された今の若者の悲惨な老後 

今回の財政検証では、経済成長や労働参加が進むことを前提条件としたケースを多く示しているが、こちらは見る価値が無い。

今後、国内の消費は酷く低迷し、内需は縮小の一途を辿るため、経済成長が進む可能性は極めて低いからである。

既にオリンピック特需はとっくに終わっていて、消費税増税前から消費が低迷しているのが現実であり、2019年の各家庭の夏休みの予算は過去最低だ。

国民の将来に対する不安は大きくなり、賃金の上昇が抑制されている一方で、物価は上昇するという最悪の状態に増税による負担増が待っている。

これでは国民が金を使わないのも無理はない。

もうこの国の将来には期待できないのである。

経済成長が進む前提のこのような誤魔化しの試算に目を通すのは時間の無駄だ。

そもそも、最悪のケースを想定して備えなければ意味が無い。

よって、最悪のケース(これが現実となる可能性が高い)を考えたい。

つまり、ケースⅥをベースに考えるのが妥当ということだ。

 

政府が示す最悪のケースでは、2043年には所得代替率50%に到達するとされ、その後は2052年度に積立金がなくなり完全な賦課方式に移行すると試算される。

その後、所得代替率38%~36%にまで落ち込むと試算される。

 

正直なところ、見立てがかなり甘いと考えられる。

より詳細に前提条件を分析すると、2065年の合計特殊出生率を1.44としていて、平均寿命を男性84.95歳、女性を91.35歳としている。

また、賃金上昇率を0.4%、物価上昇率を0.5%としている。

 

今年は年金問題が国民の高い関心を集めたが、将来2000万円不足するということが刷り込まれているだけの人が多いのは残念だ。

本当に不足するのは2000万円だけで済むのか、検証したい。

2065年の合計特殊出生率を1.44と設定しているが、昨年2018年の合計特殊出生率は1.42であり、現在とそれほど変わらない設定なのである。

単純に考えていただきたいのだが、終身雇用の崩壊と年金問題で若者の将来に対する不安が強い中で、結婚しなせず子供を産まなくなるのが自然ではないだろうか。

そもそも、若者の貧困は深刻で、お金が無いから結婚ができない、物が買えないという状態だ。

そこに、将来に対する不安が大きくなれば、ますます結婚から遠のき、子供を産み育てることは困難と考えるのは当然だろう。

2019年の結果にはそれほど影響が出ないと考えられるため、2020年の合計特殊出生率がどれほど低下するのか、注目したい。

その数字に若者の将来に対する不安の強さが表れるはずだ。

改めて触れるが、政府が示す所得代替率は現役男子の手取り収入に対する夫婦2人分の給付額であるである点にも注意していただきたい。

生涯未婚率が上昇する中で、これは考慮しなければならない。

 

平均寿命についてはさらに伸びる可能性を考えなければならないし、長生きするということは病気になるリスクが高まる。

医療費はいくらかかるかわからないので、その分を考慮して多めに資産を残さなければならない。

 

賃金上昇率0.4%としている点について考える。

現在、賃金が上昇しているのは一部の大企業と大企業の状況で給与が決まる(人事院勧告)公務員くらいである。

中小企業では賃金は上がっていない印象だ。

統計の不正の問題もあり数字を示すことは難しいが、実際にはマイナスという見方もあり、働き方改革による収入減の影響も大きく、オリンピック前でも一般的に賃金は上昇していないと考えてよいだろう。

今後、オリンピック後に0.4%の賃金上昇が続くということは考えられない。

マイナスになることを考えた方がよいのではないだろうか。

 

物価の上昇率についてだが、政府はコアCPIを指標として用いているが、これがそもそもの誤りだ。

CPIとは消費者物価指数のことであり、物価の変動率を示している。

コアCPIは、CPI(総合)から天候などの影響で価格が変動しやすい生鮮食料品を除いたもので、コアコアCPIはコアCPIから変動の大きいエネルギー価格の影響を除いたものである。

日本はエネルギーを輸入に大きく依存しているため、コアコアCPIを指標として用いるべきであるが、政府はコアCPIを用いているのである。

最新のデータである2019年7月のコアコアCPIは0.6%の上昇である。

2018年の平均は0.4%の上昇だった。

インフレ率2%を目標として掲げあらゆる手を尽くしてきたが、この程度だ。

目標の2%には遠く及ばない。

最近の物価上昇の背景には原材料価格の高騰や人件費の高騰による影響が大きく、賃金の上昇が伴わない中で、消費が低迷する最悪の状況なのである。

このような状況が続けば、デフレになる可能性がある。

 

経済成長が進まないケースでも前提条件として用いられている数字が現実的ではないことがお分かりいただけるだろう。

所得代替率が50%を割り込むのは2030年代後半と考えてよいのではないだろうか。

政府は自分達が在任中は問題にしたくないため、数字を良く見せておいて問題を先送りしているだけなのだ。

そして、この尻拭いをさせられるのはこれからの時代を生きる若い世代だ。

 

実際のところ、2000万円で足りるのかどうかという問題の答えは「全然足りない」である。

気になる方は、少し前に書いた関連記事を読んでいただきたい。

公的年金は「おまけ」と考えるのか妥当だ。

5000万円あっても足りないかもしれない。

 

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今後予想される政府による数字の誤魔化し

今回の財政検証で示された所得代替率は、夫婦の年金給付額のうち、夫は基礎年金と厚生年金、妻は国民年金のみであるが、今後考えられることとしては、妻の年金給付額に厚生年金を加えて所得代替率を高く算出することで批判を回避するということが考えられる。

そうすれば、確かに所得代替率50%以上を維持できるかもしれない。

夫婦共働きが一般的になっている現在、将来の所得代替率を算出する上で妻の厚生年金を加えて考えるのは確かに実態に即したものではあるが、実質的に給付額が減少することに変わりはない。

妻の分の厚生年金があったとしても、老後の暮らしは非常に厳しいことに変わりはないのである。

 

厳しい老後に備えた資産形成

では、厳しい老後に備えてどのように資産形成すべきか。

税制面で優遇される個人型確定拠出年金(iDeCo)、つみたてNISAの活用が有効だろう。

国が推進しているこれらの制度は、今後拡大していく方向だ。

時間がお金を増やすという複利効果のメリットを享受すれば、放置しておくだけで30数年後には資産が10倍以上になる可能性もあり、早期に始めた方がいいだろう。

これらの制度に関する解説、税や社会保険料を安く抑える方法については関連記事の中で該当記事のリンクを貼っているので、ぜひご覧いただきたい。

 

長期投資では上記の2つが有効だが、資産が少なければそれほど増えないという性質がある。

短期投資であれば、月利数10%ということもよくあり、外国為替証拠金取引(FX)や暗号通貨(仮想通貨)もよい選択肢になるだろう。

これらは上がるか下がるかを予想するギャンブル感覚でやってしまえば、負けてしまう。

投資である以上、しっかり基礎となる知識を学び、根拠のあるトレードをすることが重要だ。

FXは9割の人が負ける世界とも言われる。

しかし、ギャンブルではなく適切な投資として行うのであれば、FXは株よりもイベントが多く、取引は平日24時間可能であるため、サラリーマンにも強く勧められるのである。

裁量取引をある程度経験したら、EAを活用した自動売買による収益の自動化を図るのも賢い選択肢だ。

早期から資産形成を適切に行い、厳しい将来に備えていただきたい。

 

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