マスクの相場は1箱2,000円台? 品薄解消後も当面高値が続く理由

2020年5月時点の最新情報

欧米諸国のようなマスクを着用する習慣のなかった国でも、ロックダウンを解除し経済活動を再開するために市民にマスクの着用を義務づけるなどの対策がされており、世界的に需要が増大し、争奪戦になっています。

中国では、一旦収束に向かっているためにマスクの輸出が認められているようで、中国国外へ流出が見られています。

そのため、日本国内でも中国産マスクが販売されている状況を目にすることが増えてきました。

しかし、世界的な需要の増大によってマスクの原材料価格が高騰し、中国産の薄くて低品質なものでも現在は50枚入り1箱で3000円~4000円台で販売している店がほとんどです。

それだけの高値で販売してもそれほど利益は出ないようで、当面は入手できても安価では手に入らないと考えられます。

日本産を正規ルートで手に入れた方が安価で、品質の良いものが手に入る状況となっています。

 

以下、2020年2月17日現在の情報を基に作成しています

 

マスクの品薄状態はいつ解消されるのか

新型コロナウィルス(COVID-19)の国内での感染が拡大し、都市部も地方の田舎も、全国どこでも感染者がいるという段階に入っているものと推測される状況の中、マスクや消毒薬は品薄の状態が続いています。

政府はマスクの増産を国内メーカーに要請しており、設備投資のための補助金を交付するなどして品薄状態の解消に努めています。

多くの国内メーカーは、休日返上、24時間体制で製造していて増産に懸命ですが、果たして品薄状態は解消されるのでしょうか。

 

先週の官房長官の会見で、来週以降(つまり今週から)の品薄解消を見込んでいるとしましたが、はっきり言ってしまえば大嘘です。

それはなぜか。

 

国内で流通するマスクの7~8割は中国産 品薄解消は当面先の見通し

そもそも、国内で流通しているマスクの大部分は中国産です。

8割程度中国産で残りは国産なのですが、中国は輸出規制をしているため、この少ない国産を取り合っている状態です。

政府によれば、製造ラインを増やして生産量を1.5倍にするとのことですが、工事が終わって本格的に増産できるのはもう少し先の話です。

そもそも少ない国産を1.5倍に増やしたところで、需要に対して供給量が圧倒的に少ない状況は変わりません。

政府は広く多くの国民に供給できるよう、買い占めを減らすために大嘘をついているに過ぎません。

日本以外にも多くの国でマスクが不足している状態であるため、日本に住む外国人が買い占めて中国をはじめ各国に送るとか、日本人による買い占めもしばらくは続くため、まだ入手困難な状況が続きます。

しかし、もう少し待てば転売されている高価なマスクを買わなくても定価で少量手に入る状況になると考えられます。

 

1箱2,000円台でも値上げしているわけではない

ドラッグストアで薬剤師として勤務しているため、客の購買行動に変化が見られることに気が付きました。

以前はマスクを棚に並べるとすぐにカゴに入れて購入していたのが、最近では手に取って迷ったり、一度カゴに入れたものを棚に戻す客が一定程度いるということです。

購入を躊躇する理由は価格です。

少し前までは1箱数百円の商品が多く、安価であるため購入を即決していたのが、現在流通している商品は2,000円台が相場であるため迷ってしまうようです。

「足元見られている」と仰る方もいるのですが、別に値上げしているわけではなく、店頭では定価で販売しています。

中国産は人件費が安いため安く製造できるのですが、国産の場合は高い人件費が価格に反映されているため高価なのです。

もちろん、高品質で付加価値をつけているために高価であるということもありますが、やはり高い人件費が大きく影響しています。

 

今後流通するのは高価な国産が主 1箱2,000円以上

中国産は当面中国国内から流出しないため、今後流通するのは高い国産が主になります。

買い占めが落ち着いて常に店頭に在庫があるという状態になっても、1箱数百円の安い商品を手に入れるのは難しく、手に入るのは1箱50枚入りで2,000円以上の商品という状況になります。

メーカーによっては国産でも1箱50枚入りで数百円の場合もあるようですが、国産では1,000円台でも安い方ではないかという印象です。

30枚入りで2,000円程度の商品もあれば、もっと高価な商品もあります。

暫くは安価なマスクを手に入れるのは難しい状況が続くと思われます。

 

マスクの適切な備蓄量

マスクに使用期限があるわけではないので、一定程度備蓄しておくことを推奨します。

私の場合は少なくとも5~6箱はストックしてあり、今回の新型コロナウィルスの感染拡大という状況下でも10箱以上備蓄があったため、一切買い足していません。

数年に1度はこのような感染症が発生するものと考え、半年分の備蓄があると安心できるのではないでしょうか。

1日2枚使用し、外出しない又は近くのコンビニに行く程度で使用しない日もあることを考えると、50枚入り1箱で1ヶ月が目安です。

 

しかし、本当に必要としている方への供給が優先であるため、今は1人1箱の購入にとどめ、買い占めは避けましょう。

供給が安定してきたら少しずつ備蓄を増やし、安い中国産が流通するようになったら、こちらを必要量備蓄するのが賢明ではないかと考えます。

 

通販での販売状況もよく確認し、店頭での価格と比較しながら購入するのがいいのではないでしょうか。

病院等で使われる医療用サージカルマスクは主に中国産で、通常は1箱数百円と安価で購入でき、質がそこまで良いわけではありませんが悪くもないと思います。

安価で質がそこそこのマスクをケチケチせずに使用するのが最もコスパが良く、予防の効果が高いと考えます。

中国産が国内で流通するようになったら、通販で医療機関向けのサージカルマスクを購入し備蓄することを推奨します。

 

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予防の基本は手を清潔に保つこと

予防の基本はマスクよりも手を清潔に保つことであり、手洗いが最も重要です。

消毒用エタノールを使って消毒する前に、石鹸を使って汚れを落としてから水気をよく拭き取り、消毒用エタノールをよく刷り込んで自然に乾くのを待つのが最も消毒効果が高いのです。

その他、消毒用エタノールに関して詳しく関連記事で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

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コロナやインフルに有効 薬剤師が教える消毒用エタノール(アルコール)の正しい使い方と応用法

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コロナやインフルに有効 薬剤師が教える消毒用エタノール(アルコール)の正しい使い方と応用法、代替品

最新情報追記のお知らせ

消毒用エタノールが新型コロナウィルスにも有効であると広く認知され、2020年5月現在は需要が大きく伸びている一方で、供給が追いつかない状況が続いています。

そこで、現在の流通の情報、消毒に有効な濃度を根拠とともに示した上で代替品を紹介することにしました。

この記事の最後に追記していますので、ご確認ください。

 

私は病院、保険薬局、ドラッグストアでの勤務経験のある薬剤師です。

2020年2月現在、新型コロナウィルスの感染が拡大し国民の恐怖心が大きくなっているのを実感します。

消毒薬に関する問い合わせが多く、消毒薬の選択や消毒効果を高める正しい使用法、消毒以外の便利な活用方法についてはあまり知られていないようなので、ご紹介します。

最後まで読んでいただき、常備を検討していただけると幸いです。

 

コロナやインフルに有効な消毒薬は消毒用エタノール

コロナウィルスやインフルエンザウィルスはエンベロープという膜を有するウィルスであるため、最も有効なのは消毒用エタノールです。

よくアルコールが欲しいと言われるのですが、アルコールは特定の構造を有する有機化合物全ての総称であるため、無数にあります。

店頭でお探しの際は消毒用エタノールが欲しいと伝えてください。

他にもアルコールの中で70%イソプロパノールも手指の消毒に用いられますが、こちらは消毒用エタノールに比べて毒性が強く、脱脂作用が強いため手が荒れやすいため、消毒用エタノールの使用をお勧めします。

 

無水エタノールは消毒効果なし 適切な濃度は

単に「エタノール」ではなく「消毒用エタノール」と何度も記述していますが、これには意味があります。

消毒用エタノールの濃度は76.9~81.4v/v%であり、概ね80%前後のこの程度の濃度が最も消毒効果が高いのです。

v/v%は溶液100mL中の溶質の体積(mL)を示した単位です。

濃度が高いほど消毒効果が高いものと勘違いし、無水エタノールを買おうとする方もいらっしゃいますが、上記内容を説明の上、濃度調製が必要であり、例えば水1Lとエタノール1Lを混ぜても2Lにならないため(実際には少し体積が小さくなる)単純ではないこと等を説明すると、納得して既に濃度調製されている消毒用エタノールを購入されます。

厳密に濃度調製する必要はなく、ある程度大雑把で問題ないのですが、少々面倒ではあります。

消毒用エタノールが手に入らない状況が続く中、無水エタノールはどうにか手に入るという場合には、精製水も一緒に購入し、無水エタノール:精製水=7:3の比で混合して濃度調製するとよいでしょう。

比率については4:1等と紹介しているサイトもありますが、多少濃度が薄くなっても消毒効果はさほど変わりませんので、エタノールが貴重であるこの状況下においては少し薄めにして大事に使った方がよいでしょう。

実は無水エタノールはすぐに揮発してしまうため、ほとんど消毒効果はありません。

脱脂作用が強く水分を奪うため、人体には使用しないものです。

主な用途としては水に弱い精密機器などの洗浄に用います。

消毒するためには接触する時間が一定程度必要であるため、少し水分が必要なのです。

 

同じ消毒用エタノールでも値段が違うのは酒税の差

同じ500mlの消毒用エタノールが複数種類並んでいて、値段が数百円違う場合があります。

結論を述べると、酒税の差です。

単なる消毒用エタノールは薄めると飲むことができるため、酒税がかかってしまいます。

一方で、「消毒用エタノールIP」という製品は、飲用にできないようにするためイソプロパノール等が添加されています。

そうすることで、酒税がかからないため、安く販売されています。

IPとはイソプロパノールのことです。

消毒効果に変わりはないため、在庫があれば安い方を購入するとよいでしょう。

 

消毒効果を高める正しい使用方法

ただ消毒すれば十分というわけではありません。

消毒薬の消毒効果を高めるための方法もよく知られていないようなので、ご紹介します。

皮脂や血液等の有機物存在下では消毒液の消毒効果が落ちてしまうので、まずは石鹸を使用してよく手を洗い、汚れを落としましょう。

そして水気をよく拭き取り、消毒用エタノールをよく刷り込みます。

前述の通り、消毒用エタノールは消毒効果が最も高い濃度に調製されているため、手に水分が残っている状態で消毒用エタノールを使用しても薄まってしまい、消毒効果が落ちてしまいます。

消毒用エタノールは拭き取らずに揮発するのを待ちます。

接触する時間が長いほど消毒効果が高まるため、揮発するまで少し待ちましょう。

 

用途いろいろ 便利なエタノールの活用法

消毒用エタノールは手指や環境消毒以外にも様々な活用法があるため、各家庭に数本の備蓄があってよいものです。

ある程度期限が長いため、私は2~3本常備しています。

 

エタノールは炭素数2の1級アルコールであり、親水基の影響が大きいため、大部分は水溶性です。

有機溶媒でありながら、かなり水に溶けやすい性質を有しています。

しかし、ある程度は脂溶性で多少油に溶ける性質もあります。

そのため、食事をするテーブルやキッチンの掃除で使用すると、油汚れを落とすことができ、消毒もできるため、大変重宝します。

風呂場で霧吹きを使用して天井や壁に噴霧することで、カビの発生を抑制する効果があり、掃除が楽になります。

刺激性が強く粘膜には適用できない消毒薬であるため、目や鼻、口を保護するためゴーグルやマスクを着用して作業すると安全です。

一部を除き、プラスチック製品や金属等に油性のマジックで間違えて書いてしまった場合でもエタノールで落とすことができます。

 

現代社会では誰もが持っているスマホの液晶も、消毒用エタノールで皮脂汚れを落とし綺麗にすることができる上に、消毒もできます。

スマホはかなりの頻度で触れるため、想像以上に汚れているはずです。

主たる感染源の1つと考え、清潔に保つようにしましょう。

エタノールで全体を拭いて、液晶だけは乾拭きをすることで揮発した後に残る核などで液晶が白っぽくなるのを防ぐとよいでしょう。

 

個包装の小さいアルコール綿をカバンに入れておくと、外出先でも手軽に使用できるため、便利です。

誰かにスマホの画面を見せたときに汚れていると嫌な思いをさせてしまうため、すぐに使用できるように携帯しておくとよいでしょう。

個包装であれば衛生的でコンパクトであるため、カバンに入っていても邪魔になりません。

 

このように、消毒以外にも様々な用途で便利に使えるものであるため、消毒用エタノール、消毒用エタノールを含むアルコール綿は常備しておくと非常に役に立ちます。

現在は店頭での入手が困難であるため、通販での購入をお勧めします。

下にリンクを貼っていますので、クリックするとそれぞれのページに飛びます。

 

消毒用エタノール

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アルコール綿

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わからなければ薬剤師等の専門家に相談を

消毒薬は使用方法を間違えると人体に有害であったり、非常に危険な薬品です。

エタノールは刺激性が強いため、粘膜には使用できません。

また、揮発性が高いため、火気厳禁です。

消毒薬も様々な種類があり、人体に有害であるため環境消毒にしか用いないものもありますし、効果のあるウィルスや細菌も異なります。

例えば、エタノールはノロウィルスには効果がありません。

わからなければ、薬剤師に相談してください(薬剤師のレベルはピンキリだが)。

使用目的に応じて適切な消毒薬を紹介し、正しい使用方法を教えてくれるはずです(薬剤師のレベルによる)。

医薬品は使用方法を間違えると危険で害のあるものと認識していただき、わからなければ専門家に相談して正しく使用しなければなりません。

しかし、他の客からの相談に応じている時に割り込んで話しかけてくる方が一定数いるのは残念です。

接客中には割り込んで話しかけないようにしていただき、順番を守るようにお願い致します。

こちらも人間ですから、態度の悪い客に対しては有用な情報を提供しようという意識は希薄になり、最低限度の説明しかしないため、役に立つ情報が得られなくなってしまいデメリットが大きいのではないかと思います。

 

数年に一度はパンデミックの状態になるものと考え、しっかり備えておけばこのような事態になっても困りませんよ。

 

3月8日時点の最新情報と有効濃度、代替品について(追記)

ドラッグストアではこの1ヶ月程度入荷が全く無い状況であり、一般市民が消毒用エタノール等の製剤を手に入れるのはマスク以上に難しい状況です。

そのため、あらゆる施設で入り口に置いてある消毒薬のボトルごとの盗難、或いは中身を抜き取るという事例が多発しています。

 

まずは、エタノールを持っている方向けに、エタノールが消毒効果を示す最小の濃度をお伝えします。

無水エタノールや消毒用エタノール等、濃度は様々ですが、この貴重なエタノールを長く使えるようにするために、精製水で薄めて濃度調製して使用することをお勧めします。

論文によって効果を示す濃度については様々ですが、ここではシオエ製薬株式会社の消毒用エタノールのインタビューフォーム(IF)の情報を示します。

インタビューフォームとは、日本病院薬剤師会が製薬企業に作成と配布を依頼する、薬剤師向けの医薬品解説書の一種であり、医薬品の基本的な情報を記した添付文書を補完するものです。

製剤の安定性や配合変化等の詳しいデータが示されており、病院薬剤師はこのようなインタビューフォームや様々な文献の情報を基に薬学的な判断をした上で医師や看護師等からの質問に回答したり情報提供を行います。

 

以下、インタビューフォームからの引用です。

 

エタノールの殺菌力上の最適濃度は大体50~80%の間が適当とされている。また細菌の芽胞に対してはほとんど作用しないか又は非常に弱いことが認められている。Priceの報告によれば、10~20%では10分間以上作用させないと効力はなく、しだいに濃度を増すにつれ殺菌力は強く、60~90%の間では最初の数秒間で強力に殺菌するが、90%以上では作用が弱くなることを示している。したがって本剤の濃度約70%は至適濃度と称してよく、この濃度においては皮膚に対しての拡散及び揮発性も適度で、表皮を損傷する事もなく、脂質を溶解し去ることもなく無害である。

 

以上の内容から、消毒用エタノールの濃度が最も適していると評価できますが、60%以上であれば数秒で強力に殺菌することが可能であることを考慮すると、消毒用エタノールをさらに薄めても問題ないと考えられます。

また、エタノールの殺菌力上の最適濃度は概ね50~80%の間が適当であるということから、消毒用エタノールの代替品として有効な商品が見つかりましので、紹介します。

 

クレベ&アンド ウイルス・菌除去スプレー(キッチン用)

 

この商品の成分は、

エタノール(58.00%)、グリセリン脂肪酸エステル(0.30%)、 フィチン酸(0.05%)、グリセリン(0.20%)、精製水(41.45%)

であり、エタノールの濃度としては問題ない点や、それ以外の成分の大部分は水であり、グリセリンは手指消毒用のエタノール製剤に使用される保湿剤であるため、この商品は手指消毒に使用できると考えられます。

この商品のパッケージを見ても、消毒に使用できるものとは分かりません。

しかし、成分をよく見ると消毒に使用できるものであることが分かるという商品であり、商品を置いてある場所の問題もあるかもしれませんが、こちらから紹介しなければあまり売れない商品なのです。

このメーカーは他にも手指の消毒用の商品もありますが、こちらはエタノールを添加物として含む程度であり濃度は示されていません。

恐らくは微量に含む程度であり、ベンザルコニウムを主成分としています。

ベンザルコニウムは新型コロナウィルスに効果があるというエビデンスはありませんので、新型コロナウィルスに対して使用する目的であれば適していません。

ただし、インフルエンザに対してベンザルコニウムは有効です。

意外かもしれませんが、成分を分析したところ有効なのはキッチン用です。

これらの情報を踏まえた上で購入を検討されてはいかがでしょうか。

 

通販での状況を確認したい方はリンクをクリックして確認してください。

 

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エタノールが80%近い高濃度の酒も各酒造メーカーが販売するようになってきているので、このような酒も代替品として検討してもよいのではないでしょうか。

 

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東京都と神奈川県の最低賃金は1,000円を超えた

2019年10月、年々上がり続けてきた最低賃金が大台に達した。

東京都で1,013円、神奈川県で1,011円まで上昇したのである。

最安値は東北や九州、中国・四国地方などで790円だ。

最低賃金程度の時給で働く労働者、学生等にとっては朗報かもしれないが、この人件費増は最悪のインフレをもたらし、大きな影響を受けるのは中間層だ。

 

消費税増税、原材料費高騰、人件費増の三重苦

ここで指す中間層はかなり幅が広いと考えてよい。

平均年収は上昇していて、2018年の日本のサラリーマンの平均年収は441万円だが、恐らく中央値はそれほど変わらず360万円程度であると考えられる。

関連記事では、平均年収で考えると実態と乖離してしまうため中央値で考えた方が実態に即している理由について解説している。

 

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2017年サラリーマンの平均年収は432万円だが年収300万以下は4割?

 

賃金の上昇は一部の大企業に限られていて、名目賃金でも一般的にはほぼ上昇は見られない。

しかしながら、2019年10月からは消費税の増税があり、原材料費の高騰や最低賃金の上昇と人手不足を背景とした人件費の増加がある。

これらの要因から物価が上昇してしまえば、名目賃金が変わらない以上、実質賃金は下がるため生活は苦しくなる。

最低賃金程度の時給又は単価で働く労働者の場合は良いが、それよりも少し高い程度以上で働く労働者の場合は名目賃金が上がらない以上、実質賃金が下がることとなる。

つまり、ここでの中間層とは、最低賃金よりも少し高い時給で働く層~小金持ち程度の層である。

要するに、国民の大部分の生活が苦しくなってしまうのである。

すると、消費に回すことのできる可処分所得が少ないため消費が低迷し、賃金が上がらないという悪循環に陥ってしまう。

2020年6月の東京オリンピック前までの期間限定で行われているキャッシュレス決済ならば最大5%還元というキャンペーンが終わり、オリンピックも終わってしまうと日本経済は深刻な状況に追い込まれるだろう。

しかし、最低賃金を上げなければならない事情もあるのだ。

 

外国人労働者にも避けられる日本の労働環境の劣悪さ

近年、人手不足が深刻である日本のコンビニや外食チェーンは外国人労働者が多いという点で昔と大きく変わっている。

首都圏の多くのコンビニや外食のチェーン店では、日本人の労働者だけでは不足し店が回らなくなってしまうため、外国人労働者に頼っているのが現状である。

日本の最低賃金は先進国の中では最低水準であるが、アジアではトップクラスだ。

最低賃金の高い地域に関して言えば、先進国の中でもそこまで劣っているわけではない。

現状としては外国人労働者のおかげでどうにか便利なサービスが維持できているが、この状態はそう長くは続かないだろう。

 

日本の労働環境が劣悪であることはよく知られている。

幼い頃から受けた洗脳教育によって真面目で従順な安い労働者に仕上がった日本人の多くは気が付いていないのだが、日本の労働環境は劣悪だ。

監視され、拘束時間は常に動いていなければならない。

特に仕事が発生していない場合でも、怒られてしまうために何かしている風を装わなければならない。

始業時間よりも早く働き、就業時間を過ぎても無賃労働を強いられる。

彼らの感覚では到底理解できるものではないはずだ。

 

首都圏のような客が多いエリアのコンビニや飲食店の労働環境はさらに劣悪だ。

常に客が大量に来店するため、常に多忙であり、ずっと単純な労働を数時間休憩無しで強いられる。

それだけ大変なのに時給は安い。

日本はサービスが過剰であり、その点や文化などには魅力を感じるため、観光で訪れたいと思う外国人は多いのだが、日本の労働環境の劣悪さを知る人は日本でなんか働きたくないと考えるのである。

今はまだアジアの中では日本の時給は高いが、今後各国の最低賃金が上昇してくると労働環境が劣悪な日本なんて見向きもされなくなる。

他の国では同じくらいの賃金でもっと楽に仕事ができるからだ。

すると、いよいよ働き手がいないために便利なサービスの提供が困難になってしまうのである。

現在は働き手が不足しているため、労働者が仕事を選べる状況である。

選んでもらうためには、もっと緩くて旨みがなければならないだろう。

 

最低賃金が上がると仕事が無くなる?

最低賃金が上昇し、無賃労働を強いることが許されなくなりつつある状況で、賢い経営者はコストを抑えるために何を考えるだろうか。

それは人を極力使わないことだ。

技術の進歩に伴い、あらゆる作業が機械化される。

このブログでもコンビニの状況について触れることがあるが、それは大手3社でシェアの9割以上を占めるようになり、合理化されたこの業界は進みが早く、他の業界が遅れてコンビニ業界のマネをすると考えられるからだ。

では、コンビニ業界ではどのような動きがあるのだろうか。

 

まだ実験段階ではあるが、一部の店舗では無人化に向けての省人化を行っている。

深夜帯に限り売り場やレジに店員を配置せず、バックヤードでの作業を行う店員が1人いるだけだ。

何かあった場合に対応できるようにするために一応人はいるのだが、酒・タバコの販売はせず、料金収納や宅配も受け付けない。

セキュリティを強化し、監視カメラは数十台に及ぶ上に施錠された店舗に入店の際には認証が必要になる。

認証を必要とする等、個人が特定できるようにすることで万引き等の犯罪の抑止に一定の効果があるだろう。

しかし、店から出てきた客と入れ違いで入店したり、他の客に続いて施錠される前に入店する場合などは認証しなくとも入店できてしまうのは問題だろう。

会計も無人のレジで、決済方法も多様だ。

キャッシュレス化が進んではいるが、現金での支払いも可能にしているようだ。

レジ付近は監視カメラが大量に設置されていて、不正がないようにしっかりと監視している。

AIの発達によって人の不審な挙動をリアルタイムで感知できるようになれば、自動での通報も可能になるかもしれない。

 

このように、人を極力使わずに営業することで人件費を抑えようという動きがあるのだ。

機械ならば、電気を供給すれば24時間働かせることができるし、人のように権利を主張することもなく、指示通りに従順に働く。

機械は経営者にとって理想的な労働者なのである。

人の確保が難しく、人件費が高騰しコストがかかるのであれば、機械化を進めるのは当然だろう。

誰でもできる簡単な仕事は、これからの時代には徐々に姿を消すことになるのだろう。

 

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楽天ペイは楽天カードやEdyよりも還元率が高い

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以前、上記の関連記事の中で楽天カードとEdyを紹介したことがあるが、これらよりも楽天ペイは還元率が高く、勧められるのだ。

楽天ユーザーならば、QRコード決済は楽天ペイが最もお得だろう。

 

ボイントが貯まりやすい仕組み

楽天ペイはクレジットカードを登録する後払いの仕組みで、事前のチャージは必要ない。

クレジットカードは楽天カードを登録することで、楽天ペイ利用分の他にクレジットカード利用分もポイントを獲得できるため、二重でポイント得ることができる。

その他、様々なキャンペーンを実施しており、国による消費者還元事業による還元と合わせて5%還元するキャンペーンを実施していて、例えばコンビニではキャッシュレス決済で通常は2%の還元であるところ、楽天ペイから3%還元され、合計で5%還元されるというキャンペーンを実施中だ(2019年12月2日まで、エントリーが必要。第二弾の実施も予定されている)。

 

Suicaのチャージでポイントが貯まるように

2020年春には楽天ペイでSuicaの発行やチャージが可能になる予定で、Suicaのチャージで楽天スーパーポイントを獲得することができるようになる。

キャッシュレスの中で最もお得なのは楽天ペイになるのではないだろうか。

 

楽天カードやEdyよりも利用できる店舗が少ない

まだ楽天ペイが利用できる店舗は楽天カードやEdyよりも少なく、限られている。

QRコード決済に対応している店舗でも、楽天ペイが含まれていない店舗が多いのが現状だ。

10月からはセブンイレブンでも利用可能になり、キャンペーンも実施している。

Suicaのチャージでもポイントが貯まるようになれば需要が高まるため、今後は楽天ペイが利用できる店舗は増えていくことだろう。

 

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消費税増税による経済の冷え込みとお役所仕事の尻拭いをさせられる弱者

消費税増税による経済の冷え込みとお役所仕事の尻拭いをさせられる弱者

2019年10月、消費税率は10%に

2019年10月、消費税が8%から10%に引き上げられた。

いよいよこの国の経済は絶望的な冷え込みに襲われ、立ち直ることが困難になるかもしれない。

様々な要因が重なり、消費の冷え込みは国民の想像を大きく超えるだろう。

コンビニのイートインは外食か?などという議論は実にくだらないのだ。

コンビニのイートイン利用で登場する「正義マン」とかいうアホの存在については、この記事の最後におまけとして掲載している。

現在の社会情勢についての理解が不十分で、数年先を見通すこともできていない現政権の愚作には失望しかない。

多くの国民は、消費税増税によってトータルの税収が増えるわけではないという現実も知らないのだろう。

実際のところ、消費税の増税によって増えた税収は、減った法人税の穴埋めにしかならないのだ。

 

期間限定のキャッシュレス決済によるポイント還元

今回の増税はキャッシュレス化を進めるのが大きな目的でもあり、外国人が多数来日する東京オリンピックまでにキャッシュレス対応している店舗を増やさなければならない。

現金決済のみの店舗ばかりでは外国人は特に不便さを感じてしまい、再び日本を訪れることがなくなってしまうかもしれないのだ。

内需が縮小の一途を辿る日本では外国人に金を落としてもらうことは非常に重要であるため、大きな混乱を招くのは承知の上でキャッシュレス化を促進しているのである。

そこで、オリンピック前の2020年6月までの期間限定で2%又は5%還元するというキャンペーンを行っていて、還元する分については国の負担だ。

オリンピックが始まってから還元を続けることに国としてのメリットは無いため、6月までと期限を定めている。

国の方針に従順な現場は10月1日からの開始に間に合うよう準備を進めていたが、国の対応の不手際やミスが目立つ。

5%還元の対象であるにもかかわらず2%で登録されていたり、ポスターが届かないとか、国のいい加減な対応が目立っているのだ。

それで損をするのは還元を受けられない消費者や、還元を受けられないと知り、客にその店舗の利用を避けられた事業者側だ。

国は消費者の還元を受けられないことの損失や事業者の機会損失などはどうでもよく、ただキャッシュレス化が進めばそれでいいため、ずさんな対応になっているのだ。

お役所仕事とはそのようなものである。

最も大きな損失を被っているのはずさんな対応をされた店舗や事業者である。

 

オリンピック後の消費の落ち込み、景気の冷え込みは想像を絶するものに

今回の増税はキャッシュレス決済による還元があるため、これまでの増税ほど消費が落ち込むわけではないと考えられる。

むしろ、増税後の方が得をするケースもあるだろうから、賢い人は増税後のキャンペーンを狙うだろう。

しかし、6月に還元のキャンペーンが終了し、オリンピックが終わった後の消費

の落ち込みは厳しいものになると考えられる。

オリンピック後の日本経済は厳しい冷え込みが予想されるのだ。

実質賃金が上がらない中で、増税に加えて最低賃金上昇及び原材料価格上昇に伴う物価の上昇が待ち受ける。

特に中間層の消費の落ち込みは大きくなると考えられる。

増税前から消費の落ち込みは大きく、一般家庭の2019年の夏休みの予算は過去最低だ。

働き方改革なるものによる残業代の抑制も大きな影を落としている。

企業もベースアップには消極的で、今後のリスクを考えて一時金を上げる程度に止めているのが現状だ。

このままでは負の連鎖が止まらない。

 

一度上がった税率を下げられないという固定観念を改めるべき

この国では消費税率を上げることが大きな議論となる。

それは、一度上がった税率は二度と下がらないという固定観念による。

その時の景気によって税率を上げたり下げたりと、柔軟に対応できるようにすれば経済に与える影響も軽度なもので済むだろう。

支持率が下がるというリスクを負いながら、国民から搾取するためにせっかく上げた税率を下げるという考えが与党には存在しないのだ。

消費税率を上げるのも下げるのもハードルが高すぎるということが問題なのだ。

 

便利でお得なキャッシュレス決済を活用しよう

10月になってキャッシュレス決済の還元が始まったにもかかわらず、キャッシュレス決済が利用可能な店舗でも現金払いの客が多い印象を受ける。

そもそもキャッシュレス決済に対応していない店がまだ多すぎる。

恐らく、現在でもキャッシュレス決済に対応していない店舗は、ずっとこのまま現金主義を貫くのだろう。

現状よりもキャッシュレス化が進む可能性は低いと考えられる。

 

しかし、キャッシュレスに対応している店舗では積極的に利用したいものだ。

その中で、特に楽天ユーザーには楽天ペイを勧めたい。

2020年春には楽天ペイによるSuicaのチャージが可能になる予定で、キャッシュレス決済で最もお得なのは楽天ペイになるのではないだろうか。

詳しくは、関連記事を読んでいただきたい。

 

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【キャッシュレス決済】楽天ユーザーには楽天ペイが勧められる

 

おまけ: 「正義マン」とかいうアホがイーンイン脱税を摘発しているらしい?

コンビニでの食料品の購入は持ち帰りであれば税率8%、イートインを利用する場合には外食という扱いになり10%が適用される。

10月になり実態を調べてみると、客からの申告が無ければ税率8%で会計している店舗が多いようだ。

店側にとっても高い税率を適用するメリットは皆無であり、トラブル回避のためには当然の対応だろう。

しかし、歪んだ正義感を振りかざす「正義マン」なるアホの存在が店と他の客を困らせているようなのだ。

そもそも、同じものを食べる場所が違うだけで税率が異なるのは意味がわからないし、外食が必ずしも贅沢とは限らない。

そのように、制度が適切かどうかを批判的に吟味することもできないようなバカが歪んだ正義感を振りかざし、イートインを利用すると申告したにもかかわらず、レジで8%の税率が適用されたことに腹を立ててクレームをつけ、後ろに並んでいる客の時間を奪うという事例があるようだ。

また、イートインを利用している他の客にも干渉し、10%の税率で会計していないことに文句を言ってくる迷惑客がいるようである。

このようなバカには何を言っても通用しないので、相手にしないのが適切な対応だろう。

このような「正義マン」とかいうアホには注意が必要だ。

 

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進まないキュッシュレス化 日本人の現金主義は変わるのか

2019年財政検証の結果が示す年金の悲惨な未来と政府のその場しのぎ体質

政府が示す数字と2014年財政検証の結果を整理

参院選が終わってようやく公表された2019年財政検証結果であるが、選挙前に見苦しく言い訳をして公表せずに選挙後に公表を先送りした段階で、選挙結果に多大な影響を与えるほどに悲惨な結果なのだろうと想定していたが、現実はその想定よりも酷いものである。

まずは、前回の財政検証の結果から整理したい。

政府が示す数字のカリクリや前回2014年財政検証の結果について、詳しくはこちらの記事に示しているが、簡単に整理した上で2019年の財政検証の結果を分析する。

 

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税金よりも高い社会保険料 保険料率18.3%から25.9%へ? 待ち受ける最悪のシナリオとは

 

前回の財政検証では、厚生年金保険料率を現在の18.3%から25.9%へ引き上げなければ、所得代替率50%を維持できない可能性が示唆された。

所得代替率とは、現役世代の平均賃金に対する公的年金の給付額の割合であり、政府が公表する所得代替率とは現役世代の手取り収入(可処分所得であり、税、社会保険料を含まない)に対する公的年金の給付額(税、社会保険料込み)である点に注意が必要だ。

つまり、分母は税、社会保険料を除いて小さくし、分子は税、社会保険料込みで大きくすることで割合を大きく見せるという数字のカラクリがある。

ただし、分母は現役男子の平均手取り収入額で示されている点にも注意が必要だ。

収入は女性よりも男性の方が多い点や、中央値ではなく平均で示されていることを考えると、分母は実際よりも大きくなっていると考えられる。

すると、所得代替率としてはその点だけを考えれば低く算出されてしまうので、政府がなぜ現役男子の数字を用いているのかは不可解だ(所得代替率を高く算出したいはずだ)。

共働きではなく、夫が働き妻は家事をするという昔の一般家庭のイメージが現在の老夫婦の年金給付額の実態に合致するのはわかるが、女性の社会進出が進んだ現在の現役世代がリタイアする頃にも同様の方法で所得代替率を算出するのだろうか。

収入の平均と中央値の乖離については関連記事に示すので、気になる方は読んでいただきたい。

さらに問題なのは、分子にあたる給付額が夫婦2人分で示されているのに対して分母は男性1人であるということだ。

夫婦で老後を過ごすという前提で試算されていて、単身者の生活はより厳しくなるだろう。

生涯未婚率が今後さらに高まる中で、この点はよく考慮しなければならない。

夫婦で老後を迎えたとしても、先にどちらかが死ねばその後は1人で生きていくことになるということも忘れてはならない。

理解していただきたいことは、夫婦での実質的な所得代替率が50%を下回るのは避けられないということだ。

このように、政府が示す数字は批判を避けるための小細工がされていて実態とは乖離したものであるという認識を持っていただきたい。

 

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2019年財政検証の結果で示された今の若者の悲惨な老後 

今回の財政検証では、経済成長や労働参加が進むことを前提条件としたケースを多く示しているが、こちらは見る価値が無い。

今後、国内の消費は酷く低迷し、内需は縮小の一途を辿るため、経済成長が進む可能性は極めて低いからである。

既にオリンピック特需はとっくに終わっていて、消費税増税前から消費が低迷しているのが現実であり、2019年の各家庭の夏休みの予算は過去最低だ。

国民の将来に対する不安は大きくなり、賃金の上昇が抑制されている一方で、物価は上昇するという最悪の状態に増税による負担増が待っている。

これでは国民が金を使わないのも無理はない。

もうこの国の将来には期待できないのである。

経済成長が進む前提のこのような誤魔化しの試算に目を通すのは時間の無駄だ。

そもそも、最悪のケースを想定して備えなければ意味が無い。

よって、最悪のケース(これが現実となる可能性が高い)を考えたい。

つまり、ケースⅥをベースに考えるのが妥当ということだ。

 

政府が示す最悪のケースでは、2043年には所得代替率50%に到達するとされ、その後は2052年度に積立金がなくなり完全な賦課方式に移行すると試算される。

その後、所得代替率38%~36%にまで落ち込むと試算される。

 

正直なところ、見立てがかなり甘いと考えられる。

より詳細に前提条件を分析すると、2065年の合計特殊出生率を1.44としていて、平均寿命を男性84.95歳、女性を91.35歳としている。

また、賃金上昇率を0.4%、物価上昇率を0.5%としている。

 

今年は年金問題が国民の高い関心を集めたが、将来2000万円不足するということが刷り込まれているだけの人が多いのは残念だ。

本当に不足するのは2000万円だけで済むのか、検証したい。

2065年の合計特殊出生率を1.44と設定しているが、昨年2018年の合計特殊出生率は1.42であり、現在とそれほど変わらない設定なのである。

単純に考えていただきたいのだが、終身雇用の崩壊と年金問題で若者の将来に対する不安が強い中で、結婚しなせず子供を産まなくなるのが自然ではないだろうか。

そもそも、若者の貧困は深刻で、お金が無いから結婚ができない、物が買えないという状態だ。

そこに、将来に対する不安が大きくなれば、ますます結婚から遠のき、子供を産み育てることは困難と考えるのは当然だろう。

2019年の結果にはそれほど影響が出ないと考えられるため、2020年の合計特殊出生率がどれほど低下するのか、注目したい。

その数字に若者の将来に対する不安の強さが表れるはずだ。

改めて触れるが、政府が示す所得代替率は現役男子の手取り収入に対する夫婦2人分の給付額であるである点にも注意していただきたい。

生涯未婚率が上昇する中で、これは考慮しなければならない。

 

平均寿命についてはさらに伸びる可能性を考えなければならないし、長生きするということは病気になるリスクが高まる。

医療費はいくらかかるかわからないので、その分を考慮して多めに資産を残さなければならない。

 

賃金上昇率0.4%としている点について考える。

現在、賃金が上昇しているのは一部の大企業と大企業の状況で給与が決まる(人事院勧告)公務員くらいである。

中小企業では賃金は上がっていない印象だ。

統計の不正の問題もあり数字を示すことは難しいが、実際にはマイナスという見方もあり、働き方改革による収入減の影響も大きく、オリンピック前でも一般的に賃金は上昇していないと考えてよいだろう。

今後、オリンピック後に0.4%の賃金上昇が続くということは考えられない。

マイナスになることを考えた方がよいのではないだろうか。

 

物価の上昇率についてだが、政府はコアCPIを指標として用いているが、これがそもそもの誤りだ。

CPIとは消費者物価指数のことであり、物価の変動率を示している。

コアCPIは、CPI(総合)から天候などの影響で価格が変動しやすい生鮮食料品を除いたもので、コアコアCPIはコアCPIから変動の大きいエネルギー価格の影響を除いたものである。

日本はエネルギーを輸入に大きく依存しているため、コアコアCPIを指標として用いるべきであるが、政府はコアCPIを用いているのである。

最新のデータである2019年7月のコアコアCPIは0.6%の上昇である。

2018年の平均は0.4%の上昇だった。

インフレ率2%を目標として掲げあらゆる手を尽くしてきたが、この程度だ。

目標の2%には遠く及ばない。

最近の物価上昇の背景には原材料価格の高騰や人件費の高騰による影響が大きく、賃金の上昇が伴わない中で、消費が低迷する最悪の状況なのである。

このような状況が続けば、デフレになる可能性がある。

 

経済成長が進まないケースでも前提条件として用いられている数字が現実的ではないことがお分かりいただけるだろう。

所得代替率が50%を割り込むのは2030年代後半と考えてよいのではないだろうか。

政府は自分達が在任中は問題にしたくないため、数字を良く見せておいて問題を先送りしているだけなのだ。

そして、この尻拭いをさせられるのはこれからの時代を生きる若い世代だ。

 

実際のところ、2000万円で足りるのかどうかという問題の答えは「全然足りない」である。

気になる方は、少し前に書いた関連記事を読んでいただきたい。

公的年金は「おまけ」と考えるのか妥当だ。

5000万円あっても足りないかもしれない。

 

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今後予想される政府による数字の誤魔化し

今回の財政検証で示された所得代替率は、夫婦の年金給付額のうち、夫は基礎年金と厚生年金、妻は国民年金のみであるが、今後考えられることとしては、妻の年金給付額に厚生年金を加えて所得代替率を高く算出することで批判を回避するということが考えられる。

そうすれば、確かに所得代替率50%以上を維持できるかもしれない。

夫婦共働きが一般的になっている現在、将来の所得代替率を算出する上で妻の厚生年金を加えて考えるのは確かに実態に即したものではあるが、実質的に給付額が減少することに変わりはない。

妻の分の厚生年金があったとしても、老後の暮らしは非常に厳しいことに変わりはないのである。

 

厳しい老後に備えた資産形成

では、厳しい老後に備えてどのように資産形成すべきか。

税制面で優遇される個人型確定拠出年金(iDeCo)、つみたてNISAの活用が有効だろう。

国が推進しているこれらの制度は、今後拡大していく方向だ。

時間がお金を増やすという複利効果のメリットを享受すれば、放置しておくだけで30数年後には資産が10倍以上になる可能性もあり、早期に始めた方がいいだろう。

これらの制度に関する解説、税や社会保険料を安く抑える方法については関連記事の中で該当記事のリンクを貼っているので、ぜひご覧いただきたい。

 

長期投資では上記の2つが有効だが、資産が少なければそれほど増えないという性質がある。

短期投資であれば、月利数10%ということもよくあり、外国為替証拠金取引(FX)や暗号通貨(仮想通貨)もよい選択肢になるだろう。

これらは上がるか下がるかを予想するギャンブル感覚でやってしまえば、負けてしまう。

投資である以上、しっかり基礎となる知識を学び、根拠のあるトレードをすることが重要だ。

FXは9割の人が負ける世界とも言われる。

しかし、ギャンブルではなく適切な投資として行うのであれば、FXは株よりもイベントが多く、取引は平日24時間可能であるため、サラリーマンにも強く勧められるのである。

裁量取引をある程度経験したら、EAを活用した自動売買による収益の自動化を図るのも賢い選択肢だ。

早期から資産形成を適切に行い、厳しい将来に備えていただきたい。

 

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2019年人事院勧告 若年層手厚くベースアップと不可思議な住居手当増額

若年層は民間との格差が縮小

公務員といえば、若いうちの給与は安いもの。

民間との格差が大きく、若年層に限定したベースアップはある程度納得のいくものでしょう。

本年の人事院勧告では若年層のみのベースアップとなり、俸給表により多少異なりますが、概ね1500円程度のベースアップとなります。

賞与については0.05ヶ月分増の年間4.5ヶ月となります。

これで6年連続の引き上げとなる見込みで、現政権では人事院勧告通りに給与法を改正する可能性が高いと考えられます。

しかし、この程度のベースアップでは、原材料高騰や人件費高騰、を背景とした物価の上昇分や消費税増税に伴う負担増の穴埋めにもならないでしょう。

 

住居手当は謎の増額

住居手当については上限が27,000円から28,000円へ引き上げられます。

高い家賃を払う余裕のある人に対して手厚くするということであり、国民の理解が得られにくい勧告ではないでしょうか。

 

薬剤師の初任給は1500円増

薬剤師の初任給は医療職二表2級15号俸ですが、こちらも1500円増の210,500円となります。

本俸だけで見ると安いのですが、地域手当も基本給に含まれるため、実は民間よりも実質的な給与は公務員の方が高いのが現状です。

地域手当が20%、住居手当を満額とすると、合計280,600円となり、こちらは民間の給与が下がる中で公務員薬剤師の給与は上がり、以前よりも民間との差は拡大します。

 

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トヨタが5年間法人税を免れた理由から考察する労働者が使い捨てにされる未来

一部の大企業がほとんど法人税を納めていない現実と制度

一部の大企業は、利益に対して納めている法人税が圧倒的に少ない。

トヨタが5年間も法人税を納めていなかったのは有名で、社長の自慢げな発言や新聞広告からも、カネに汚く自分の利益しか考えていない厭らしさを在り在りと感じる。

非常に賢く、適切な経営判断ができているということでもある。

節税上手なのは悪いことではない。

法を犯しているわけではなく合法なのだから、別に問題ではない。

決められた枠組みの中で最適な選択をしているのだ。

世の中の大部分の人は文句を言うだけで何も考えていないし、行動していない。

例えば、年金問題にしてもそうだ。

将来、年金がそれほど受け取れないなら保険料を払いたくないという声は多い。

しかし、社会保険料の合法的な搾取を免れることはできない。

税金も同様だ。

どうせ政治家や官僚が私腹を肥やすために使われるなら、税金なんか払いたくないと考える人は多い。

その考えに至るのは当然なのだが、合法的な搾取を免れることはできないし、制度を変えることもできない。

それならば、その制度や枠組みの中で最も損をしない方法を考えて実践した方が賢明だろう。

文句を言うよりも、法や制度について学び、よく理解した上で、その中での最適解を導くことのできる人は賢いのである。

参考までに、この記事の最後に節税や社会保険料を安く抑える方法について解説した関連記事を示すので、興味のある方は参照していただきたい。

 

話を戻すが、トヨタは5年間も法人税を納めていなかったのである。

社員の長時間労働や低賃金の非正規労働者の犠牲の上で、さらに下請けの企業に無理な要求をして犠牲を強いた上で莫大な利益を上げてきたにもかかわらず、法人税の納税を免れていたのである。

なぜ免れることができたのか。

それは2009年度税制改正において導入された、外国子会社配当益金不算入という制度が大きく関係する。

二重課税を嫌って、外国の子会社が儲けた金を内部留保として溜め込んでしまうと日本の経済が活性化しない。

そこで、剰余金の配当等の額の95%に相当する金額を益金不算入とすることによって、ほとんど課税されないようにしたのである。

この制度によって日本に金を移動させようとしたのだが、ここで問題となるのがtax haven(タックス・ヘイヴン)である。

現地で儲けた分は現地で課税されるため、日本に金を移す際に二重課税を避けるのがこの制度の目的であるが、タックス・ヘイヴンであれば現地での法人税がかなり安く抑えられる。

そして日本でもほとんど課税されないため、儲けの大部分が残るのである。

日本は世界でも屈指の法人税の高さで知られ、トップ争いをしている現在の実効税率は30%程度である。

これでも昔に比べると随分低くなったものだが、アメリカが大幅な減税に舵を切ったこともあり、外国で儲けを出せば基本的に法人税は安くなる。

トランプ政権になり、トップだったアメリカが21%まで大幅に減税したのは大きな衝撃だ。

発展途上国では人件費が安いこともあり、法人税率の低い海外で生産した方が儲けは多くなり、この制度によって法人税がかなり安く抑えられているのだ。

内需の低下によりターゲットは外国となり、国内で生産して輸出する形態から、海外に工場をつくり現地で生産する形態になったトヨタにとっては最高の制度であり、タイミング的にもトヨタのために作られた制度であると指摘する有識者もいるほどである(恐らくそうだろう)。

 

トヨタに限ったことではないが、日本の大企業の中には、儲けに対して納めている法人税が圧倒的に少ない企業もある。

税引き前の純利益が数百億円とか、桁がもう一つ大きくても実際に納めている法人税は数億円なんてケースもある。

一般国民の生活は苦しくなる一方で、経営陣だけで儲けを独占し、内部留保を溜め込んでいるのが実態だ。

 

なぜ、このような一部の大企業を大きく優遇するような制度を作ってしまったのか。

この本質的な理由を考察することによって、労働者の悲惨な未来が見えてくる。

 

カネに汚い政治家と大富豪のwin-winな関係性から制度は作られる

政治家はカネに汚い。

カネに汚い政治家の不祥事に関するニュースなんか見飽きただろう。

自動車業界と自由民主党の癒着がエグいのはご存知だろうか。

2017年の政治資金収支報告書によれば、自民党への政治献金は自動車業界全体で3億を超える。

企業別の政治献金が最も多いのはトヨタで、6440万円だ。

つまり、トヨタは自民党にとって最大のスポンサーなのである。

因みに、日産やスバルも3000万円程度の政治献金をしている。

さらに驚くべきことに、トヨタは法人税を納めていなかった期間も自民党にしっかりと政治献金をしていたのである。

この自民党とベッタリの関係性によって、トヨタをはじめとする自動車業界に非常に有利な税制度になってしまったのである。

納税されたところで、そのカネは自民党のものになるわけではない。

自分達が自由に使えるカネが手に入るからこそ、意味があるのだ。

トヨタにとっても、数千万円の政治献金によって節税できる金額は桁がいくつも多く、かなり安上がりで済む。

あくまで、表に出ている数字が全てであればという話だが。

研究開発費の税額控除など、外国子会社配当益金不算入以外にもトヨタの為に作られた制度なのではないかと思われる制度があり、政治とカネの問題は闇が深いのである。

よく尻尾を振る犬に対してこそ、主人は良質なエサを大量に与えたくなるものだ。

昔から国家と一部の富裕層の為に制度は作られるものである。

この記事のこれまでの内容が理解できる方であれば、学校教育が国家と一部の富裕層の為に存在するという関連記事の解説も納得できるだろう。

 

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自民党と経済界の癒着から、労働者の悲惨な未来が見える

これまでの記事の内容を補足しながら簡単にまとめると、自動車業界を中心として経済界から多額の政治献金がなされており、自民党政治は政治献金の多い業界や企業に対して有利になるような税制に改めてきたということである。

この事実と経済界の重鎮の発言、経済界の意向から、労働者の未来について考える。

経団連会長やトヨタ社長の「終身雇用の維持は難しい」という趣旨の発言は大きな話題となり、若者に将来に対する大きな不安を抱かせた。

 

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経団連会長「終身雇用もう守れない」 早期退職制度の実態と若者の働き方の最適解

 

終身雇用や年功序列の崩壊はわかりきってはいたが、経済界の重鎮が明確に発言したことが大きいのである。

既に大企業では早期退職制度による45歳以上の社員の追い出しが始まっていて、45歳定年説なるものが登場した。

 

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社畜として生きる事のバカバカしさ 相次ぐ老害切りは何を意味するのか ~若いうちは低賃金、歳を取っても昇給しない時代の生き方~

 

経済界の重鎮が発言した内容と、大企業が早期退職制度による追い出しを行っているという状況証拠から、今後どのような変化が予想されるのか。

それは、安定を奪われるということだ。

現在はしっかりと守られている労働者の雇用が守られず、簡単に人を切ることのできるように法を整備する動きが出てくるのではないかと考えられる。

現在は、人をクビにすることは非常にハードルが高い。

このハードルを低くして、簡単に人をクビにできるように法を整備するのではないかと懸念している。

すると、この国の労働者の未来は悲惨なものになる。

バブル崩壊以来、非正規労働者が増え、低賃金で使われた上に会社の都合で簡単にクビを切れらてきたが、次なるターゲットは正規雇用の社員ということだ。

経団連が約1500の会員企業・団体に対して政治献金を呼びかけているという事実が、労働者を使い捨てにする未来を容易に想像させる。

早期退職制度の実態を鑑みても、人を簡単に切れるようにしたいというのは経済界の総意であろう。

将来的に年金だけでは約2000万円不足する(実際には2000万円では全然足りないと考えられる。関連記事を参照。)という報告書の問題で国民の将来に対する不安は非常に大きくなっているが、45歳でクビを切られてしまっては老後を迎える前に破産するかもしれない。

人件費高騰、人手不足を背景として急速に機械による自動化は進み、クリエイティビティの低い人は仕事が無くなってしまうかもしれない。

70歳まで働く時代とか言われるが、45歳定年説が現実味を帯びてきてしまっている。

仮に70歳まで働くとして、待っている現実はどのようなものか。

例えば、ある企業では、年収1000万円以上だった部長が年収300万円にも満たないライン工として気の狂いそうな単純作業をしているそうだ。

最低賃金程度で、つまらない仕事を延々とこなすのは苦痛だろう。

60歳を過ぎて働く場合、追い出し部屋のような場所で苦痛な仕事を押し付けられて、自主的に辞めるように追い込まれるケースが多いそうだ。

現在の自民一強では国家の為に、そして一部の富裕層、上級国民が私腹を肥やすために法が整備され、一般国民は容易に切り捨てられる未来が待っているのだ。

 

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最後に、税や社会保険料、資産形成に関する記事を示したので興味のある方はご覧いただき、賢い選択をしていただきたい。

 

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金融庁が公表した、年金だけでは95歳まで生きるには夫婦で2000万円不足するという数字。

この数字を鵜呑みにしている国民がほとんどで呆れてしまうのだが、2000万円では明らかに足りない。

もちろん半世紀以上も先の未来は予測できないが、この問題を考える上で考慮すべき点がいくつも抜けているのではないかと思われる。

 

そもそも、2004年の年金法改正時の「100年安心プラン」からわずか15年でこのお粗末なデータが示されたのだ。

100年安心とするために、厚生年金保険料率は毎年0.354%ずつ引き上げられ、現在は18.3%で高止まりしている状態だ。

さらに、マクロ経済スライドという、物価や現役世代の賃金の上昇率よりも給付額の上昇率を抑える仕組みが導入された。

詳しくは関連記事で解説しているので、参照していただきたい。

 

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これだけの改悪を行うことで、100年この制度を維持できるとしていたが、たった15年で安心は失われたのである。

 

政府が示す数字は信用できないということを学習できない国民

この国の多くの国民に欠けている極めて重要な能力がある。

疑いの目で見て、批判的に吟味することで客観的に物事を判断する能力だ。

諸悪の根源は、学校教育において従順で使いやすい労働者という規格に仕上げられているためである。

気になる方は関連記事を読んでいただきたい。

年金問題とは離れるのでこれ以上はこの記事で学校教育問題には触れない。

 

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国民は、何度も政府の示す数字に騙されるという事例を経験してきている。

しかし、過去の失敗から学習することができないのがこの国の国民だ。

今回もまた、政府の示す数字を鵜呑みにして数十年後に困り果てることだろう。

いい加減、学習することを覚えるべきではないだろうか。

 

2000万円不足に考慮されていない様々な点を整理

年金の問題に関して言えば、夫婦で2000万円の不足という試算には考慮されていない点がいくつもあるのではないだろうか。

 

そもそも、この数字は現在の給付水準で計算されているものであり、マクロ経済スライドの発動による所得代替率の低下が考慮されていない。

65歳からの30年という長い時間の中で、当然、給付水準は徐々に下がり続ける。

この2000万円という数字は、今の若い世代ではなく定年が近い世代の場合であるという点も忘れてはならない。

若者はこの比ではない程不足し、貧困老人で溢れるのだ。

 

考え付く限り、考慮すべき点を示す。

まずは物価の上昇による相対的な資産価値低下のリスクだ。

物価が上がれば、相対的にお金の価値が下がる。

そしてマクロ経済スライドという仕組みがある以上、相対的な給付額は引き下げとなる。

金融資産を現金や預貯金で保有しているのならば、相対的な資産価値の低下は避けられない。

例えば、物価が2倍に上がると、保有する資産の額はそのままであるにもかかわらず、支出は2倍になるのだ。

すると、資産が減るスピードは2倍になる。

給付額は額面では増えるものの、物価の上昇分全てはカバーできない。

 

次に、今回の金融庁の衝撃的なデータの公表を受けて、若者は結婚しなくなり、子供を産まなくなるという問題だ。

今の若者は昔とは大きく価値観が異なり、結婚=幸せという価値観を持っていない人が多い。

すると、少子化が進むことになるが、今回の金融庁の発表を受けてこの問題がますます深刻になる。

若者が結婚しない背景には経済的な問題がある。

現在の大学生の仕送り額は非常に少額であり、その影響で1990年に2460円だった1日の生活費は、現在ではわずか677円と極めて少額であり、貧しい。

働くようになってからも、奨学金の返済があるために生活のレベルはそれほど上げられない。

若者の貧困問題は深刻であり、今回の金融庁のデータ公表を受けて将来の不安が大きくなり、さらに結婚が遠のく。

結婚したとしても、出産は厳しい。

結果として、今の若者が支えてもらう側になった頃には支えてくれる人が極めて少ない状態となり、賦課方式である公的年金では「柱」ではなく「おまけ」程度にしかならないのだ。

 

次に、定年退職までの資産形成について考える。

老後のための資産を形成する上で、退職金は考慮しない方がいい。

1997年には平均で3000万円以上あった退職金は、現在では2000万円にも満たない。

法的には退職金は支払う義務がないため、退職金の規定の存在しない企業も多いのだが、退職金は減少の一途を辿る。

法的には、労働者にとって不利益になるように規定を変えることはハードルが高いのだが、現状として大幅に減少している。

数十年先に退職金があるとは限らないし、あったとしても微々たる額にしかならないことを覚悟した方がよい。

 

昔と比べて可処分所得が少ない中で奨学金という借金の返済を抱え、さらには年功序列・終身雇用の崩壊、45歳で会社を追い出されるリスクがある中で数千万円の資産形成は困難だ。

しかし、これが現実であり避けられるものではない。

政府は長く働かせようとするが、60歳を過ぎれば最低賃金で働くことを覚悟しなければならない。

さらに言えば、早期退職制度で会社を追い出された人は、それ以後は低賃金で働くことを覚悟しなければならない。

十分に資産形成できるのが45歳までであるとすれば、結婚や出産は不可能だろう。

子供が一人前になる前に会社を追い出されてしまっては、それ以後育てるのは困難になってしまう。

行政は助けてくれないし、自己責任として切り捨てられるのだ。

もう少子化は止まらない。

そもそも、職にありつけない可能性も考えなければならない。

近年、人件費の高騰や人手不足の問題があり、機械化が急速に進められている。

単純作業の大部分はAIに代替され、人の仕事はクリエイティビティの高い仕事が中心になると考えられる。

機械ができないことが人の仕事になるというイメージだ。

労働関連法規の遵守状況が厳しくチェックされるようになり、人を都合良く使うことができなくなってしまう上に、人を雇うということはあらゆるリスクを抱えることになる。

機械であれば、ずっと働かせることができる上に文句も言わない。

機械にできることは機械にさせるという考え方は当然だろう。

能力の低い労働者は必要とされなくなるという未来を覚悟しなければならない。

 

老後は2000万円で年金の不足を補えるのか?

次に、老後の資産を切り崩す生活について考える。

平均して100歳近くまで長生きするということは、がんなどの病気になるリスクを抱える。

人生50年時代にはがんになる前に死んでいたのだが、現在のように長生きする時代においては重い病気は避けて通れない。

誰もが何らかの病気を抱えて生きることになる。

私は病院に勤めているのでよく分かるが、高齢者は病院に通うことが仕事のようなものだ。

ここで、頭を抱えるのは医療費の問題である。

将来的には、高齢者でも3割負担は免れないだろう。

現在でもそれだけ医療費は膨れ上がっている。

現役世代は4割、5割負担になるかもしれない。

老後は大きな病気を抱えて予想外に大きな出費が生じる可能性があるのだ。

その点も考慮に入れなければならない。

数十年後の日本は、医療難民で溢れるようになるのだろうか。

 

色々と考えると、まもなく定年を迎える世代は1人2000万円でも足りないだろう。

病気のリスクも考えると、1人3000万程度必要になるのではないだろうか。

若者の場合、1人5000万程度は覚悟した方がよいだろう。

これはあくまで厚生年金を受給する前提であって、老齢基礎年金のみの場合は桁が1つ大きくなる。

 

苦しい懐事情の中でどのように資産を形成すべきか

昔のいい時代を生きてきた世代と若い世代では世代間格差があまりにも大きく、資産形成は容易ではない。

しかし、これが現実であり、受け入れなければならない。

資産形成や働き方についてよく考え、将来の安心は自分の力で手に入れなければならない。

 

政府が税制面で優遇し、促進している2つの制度をご存知だろうか。

個人型確定拠出年金(iDeCo)、つみたてNISAである。

今後は制度の拡充、期間の延長、新たな制度の登場も考えられ、資産を運用しながら取り崩すというやり方ならば、資産寿命の大幅な延長が可能である。

このような制度を活用して賢く資産形成しなければ、貧困老人になってしまうだろう。

貧困老人で溢れてしまっているため、生活保護などで助けることは厳しい財政事情となっていることが予想され、自己責任として切り捨てられる可能性が高いだろう。

次に示す関連記事の下部に、これらの制度の解説記事を示している。

時間がお金を生むという仕組みであるため、可能な限り早期から取り組むことが重要だ。

 

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そして、経団連会長とトヨタの社長が終身雇用は守れないとか、維持するのは難しいと発言した。

 

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この短期間に、将来の暮らしに関わる大きな2つのネガティブな話題でネットは大荒れだ。

年金だけでは暮らしていけなくなるのだから若いうちから資産形成しろと言われたところで、賃金が低い上に税や社会保険料の負担が重いため、可処分所得は昔と比べて少ない。

奨学金を抱えている人も多く、将来のための資産形成に充てる余剰金の確保が難しい人が多いのが現状だ。

年収の中央値は360万円程度と推測され、年収300万円以下で働く人が4割もいるという現状を考えると、現実は厳しい。

非正規雇用で働く人も多く、そのままある程度の年齢になると正規雇用はかなり厳しい。

 

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若者の結婚、出産や不可能 少子化、年金問題はさらに深刻に

終身雇用や年功序列という制度の崩壊により、将来の収入の増え方が予測できなくなるため、将来的なファイナンシャルプランを立てるのが難しくなる。

不安定で日々暮らしていくのがやっとな中で将来のための資産形成が必要となれば、これからの日本の未来は悲惨なものになる。

 

最近は、若者の○○離れということがよく言われる。

車離れとか、酒も飲まないしタバコも吸わないとか。

なぜ若者がムダなものに金を使わなくなったのか。

それは、単純に金が無いからである。

他にも理由はあるだろうが、根底にある理由は経済的な問題だ。

 

こんな状態で若者は結婚できるはずがない。

子供を産むのも難しい。

この状況で、将来的な懐事情の厳しい現実を突きつける2つのニュース。

この報道を受けて、ますます少子化が進むだろう。

将来に大きな不安がある中、結婚して子供を産むという無計画な行為は破産を招くからだ。

少子化が進めば、今の若者が年金生活を始める頃にはさらに年金事情は厳しいものになる。

公的年金は賦課方式であるため、その時代の現役世代が納めた保険料はその時の老人のために使われるからだ。

年金は自分の将来の為に積み立てているものではないのだ。

年金の財政事情は政府の予想よりもさらに悪化の一途を辿り、十分な資産を築けなかった貧困老人で溢れる未来が予測できる。

 

働き改革なるもののせいで年収が大きく減ってしまっているという現状もあり、資産形成のための原資をどのように確保するのかが課題である。

就業規則で副業を禁じている企業が多いが、就業時間外にどうしようが個人の自由であり、憲法でもその自由は保障されている。

労働者は会社にとって都合の良い飼い犬ではないのだ。

政府は、副業を禁じる就業規則は無効であるということを明確にする義務があるのではないだろうか。

政府の対応はあまりにも無責任であり、若者には金や労働力を搾り取られて捨てられるという未来しか待っていないように思われる。

しかし、政治家は自分の在職中だけどうにかなればいいという自己中心的な考えを持っているのだから、改善は期待できない。

 

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